597 離婚の根拠

矢崎粟は続けて言った。「あなたのお母さんは、きっと高人の指示を受けて、お父さんの側にいることで運気を吸い取れることを知ったんです。天道に気付かれないように、何度も何度もお父さんに毒を盛って病気のふりをさせていたんです。この数年間のお母さんの贅沢な暮らしは、全て運気を吸い取ることで実現していたんです。」

二人の間には呪術による繋がりがあり、田中浩が体調を崩している限り、本田水鳥は無条件で運気を吸い取ることができた。

本田水鳥は矢崎美緒の実母で、背後の人物の多くの女性の中でも比較的関係の深い一人だった。

「つまり、彼女が私との離婚を拒む理由は、私の側にいて運気を吸い取りたいからか?」田中浩は歯を食いしばって尋ねた。

矢崎粟は頷いた。「その通りです。」

田中浩から離れれば、本田水鳥はこのような贅沢な生活ができなくなり、優雅な生活を送る奥様でいられなくなる。

背後の人物に運気を提供できなくなれば、利用価値も失われてしまう。

矢崎粟は、田中凛の母親も、矢野常の母親も、背後の人物に目をつけられたこのような女性たちは、皆進んで背後の人物のために尽くし、時には時間や労力、結婚生活さえも犠牲にすることに気付いた。

このような女性たちは、あまり裕福でない家庭に生まれ、運命もそれほど恵まれていなかった。

しかし彼女たちは高慢で、何もせずに一足飛びに成功して、何の心配もない奥様になりたいと常に考えていた。

背後の人物は少しの感情的価値を与え、いくらかの利益を与えるだけで、このような女性たちを心酔させ、他の親切な人々を無視させることができた。

利己的で冷血で頑固なのが、彼女たちの性格の特徴だった。

このような人々について、矢崎粟には特に言うことはなかった。彼女たちは年を取ってから代価を払うことになる。

田中凛はこれを聞いて、やっと本田水鳥が父親を愛していないのに、なぜこの家に留まっているのかを理解した。

だから父親が離婚を持ち出すたびに、本田水鳥はまるでライオンが狂ったかのように、落ち着かなくなり、しつこく父親に許しを乞うのだった。

田中凛は冷たい声で言った。「粟、私とお父さんがあの女と縁を切って独立して暮らしたいなら、何か方法はありますか?」

今の彼女には、ただ父親に幸せに暮らしてほしい、病室を出て人生を楽しんでほしいという素朴な願いしかなかった。