岡本棉は大きく驚き、顔色が真っ青になり、足がガクガクして、何も言えなくなった。
夫の林保志は岡本棉を支え、矢崎さんに向かって一礼し、「矢崎さん、どうかお力添えを!」と言った。
昨日、彼が帰宅した後、岡本棉は矢崎粟のことを紹介し、宝物の密室での出来事も話した。林保志も矢崎粟を信頼していた。
矢崎粟は頷き、古い家の中へと歩み寄った。
彼女は中庭に入り、周りを見回した後、最後に頭を上げ、位牌を祀る本堂に視線を留め、さらに家の後ろの竹林にも目をやった。
矢崎粟は大股で本堂へと向かった。
中庭には落ち葉が多く、踏むとギシギシと音を立てた。
一行は本堂へと入っていった。本堂の扉には鍵がかかっており、隙間から家の中の位牌が薄っすらと見えた。
岡本棉は鍵を取り出し、扉を開けた。
矢崎粟はすぐには入らず、バッグから赤い蝋燭を取り出し、それに火を灯してから中に入った。