578 凶兆

岡本棉は大きく驚き、顔色が真っ青になり、足がガクガクして、何も言えなくなった。

夫の林保志は岡本棉を支え、矢崎さんに向かって一礼し、「矢崎さん、どうかお力添えを!」と言った。

昨日、彼が帰宅した後、岡本棉は矢崎粟のことを紹介し、宝物の密室での出来事も話した。林保志も矢崎粟を信頼していた。

矢崎粟は頷き、古い家の中へと歩み寄った。

彼女は中庭に入り、周りを見回した後、最後に頭を上げ、位牌を祀る本堂に視線を留め、さらに家の後ろの竹林にも目をやった。

矢崎粟は大股で本堂へと向かった。

中庭には落ち葉が多く、踏むとギシギシと音を立てた。

一行は本堂へと入っていった。本堂の扉には鍵がかかっており、隙間から家の中の位牌が薄っすらと見えた。

岡本棉は鍵を取り出し、扉を開けた。

矢崎粟はすぐには入らず、バッグから赤い蝋燭を取り出し、それに火を灯してから中に入った。

彼女は赤い蝋燭を部屋の隅に置き、位牌の方を見た。

三人も中に入り、岡本棉は位牌の前に進み、座布団の上に跪いて、何度か頭を下げた。

林保志も同じようにした。

矢崎粟は部屋の中を一周し、最後に位牌の前で立ち止まり、位牌の前の供物台に目を向け、指を伸ばして供物台の上を撫で、指先を見た。

指先に、赤い液体が付着していた。

岡本棉も矢崎粟の動作に気づき、「これは何?」と驚いて叫んだ。

彼女は先ほど入ってきた時には気にも留めず、ただ誠心誠意先祖を拝もうと思っていた。

今、供物台を見ると、確かに不自然なところがあった。

これだけ長い間帰っていなかったのだから、供物台は埃だらけのはずなのに、今見ると薄い埃の層しかなかった。

矢崎粟はゆっくりと言った。「これは七十二の邪血です。様々な虐待で死んだ動物から抽出し、精製して得られたもので、この血には極めて強い邪気と凶気が宿っています。」

「誰がこんなことを!」岡本棉は怒りで顔が青ざめ、全身が燃えるようだった。

林保志は妻の背中をさすりながら、目に怒りの色を浮かべた。

もし誰がやったのか分かれば、必ず仕返しをしてやるつもりだった。

矢崎粟は突然しゃがみ込み、供物台の下を覗き込んで言った。「供物台の下に木箱が一つ釘付けされています。道具がないと取り外せません。」

これを聞いて、岡本棉は怒りを忘れ、「分かりました、鍬を取ってきます。」と言った。