577 完全な地図

なるほど、玉璧の歴代の持ち主が玉璧の中の秘密を探り出せなかったのも、地図上の場所が見つからなかったのも、地図が不完全だったからだ。

重要な経路の一部が、この絵の中に隠されていたのだ。

矢崎粟は決意を固め、岡本棉に向かって言った。「この絵を頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

岡本棉は絵を見て、少し驚いた。

この絵は数年前に夜市で安く買ったもので、彼女がこの美人画の出来栄えを気に入らなければ、この宝物室に飾る価値もなかったはずだ。

矢崎粟がなぜこの絵に目をつけたのだろう?

岡本棉は親切に言った。「粟、あなたは知らないかもしれませんが、この絵は私が安く買ったもので、有名な画家の作品ではありません。収集価値はそれほどないので、他の収蔵品を見てみませんか?」

彼女は矢崎粟の利益を損なうことを望まなかった。

矢崎粟は有名な玄学師だが、岡本棉は心の中で彼女を後輩のように見ていた。

矢崎粟は首を振り、笑いながら言った。「これにします。見ているだけで心が楽しくなるので、家に飾るのにもいいと思います。」

彼女が決心を固めたのを見て、岡本棉はもう説得を諦めた。「わかりました。後でこの絵を包装させます。今日持ち帰れますし、保管方法についても資料を用意させます。」

矢崎粟は頷いて、「ありがとうございます」と言った。

岡本棉はさらに尋ねた。「粟、いつ私と一緒に実家に戻れそう?時間が経つほど心配になって、早めにあちらの問題を解決したいんです。」

矢崎粟は少し考え込み、最近の撮影スケジュールを思い返した。

彼女がまだ答える前に、田中良太が笑いながら口を開いた。「粟、先に岡本脚本家と一緒に行ってください。こちらは急ぎませんから、あなたの撮影シーンを3日後に延期して、先に脇役のシーンを撮影します。ただし、あらかじめ言っておきますが、3日間だけですよ、それ以上は無理です。」

彼は岡本棉と長年の付き合いがあり、親友だったので、当然、岡本棉の家が困っているのを見過ごすわけにはいかなかった。

撮影順序を変更するだけなら、経験豊富な田中監督にとっては難しいことではなく、彼も便宜を図ることを厭わなかった。

岡本棉は感謝の眼差しで田中良太を見た。「田中監督、家の問題が解決したら、必ずご馳走させていただきます。」