576 最高級の法器

岡本棉は悟ったように頷いた。

矢崎粟は続けて言った。「この家宝は相当な代数を経ているのでしょうね?」

「はい、清朝から伝わってきたものです」と岡本棉は誇らしげに答えた。

この宝物は売っても大した値段にはならないだろうが、代々の願いが込められているのだ。

矢崎粟は言った。「この二つの古物は風水的に守護の効果があり、あなたの家の若い世代にとって大変有益です。二つを離して置かないほうがいいでしょう。離すと守護の効果が失われてしまいます」

矢崎粟は岡本脚本家についてもある程度知っていた。

岡本棉はよく慈善活動をし、毎年原稿料の一部を寄付し、家族と一緒に福祉施設でボランティア活動もしていた。

岡本脚本家は若い頃、山間部で支援教育を行い、多くの子供たちの大学進学を支援したという。

この二つの陶器から、矢崎粟は岡本家が善良な家柄で、多くの福徳を積んでいることが分かった。

もしこの陶器の一つを使って法事を行えば、その効果は倍増するだろう。

矢崎粟は続けて言った。「この陶器は、あなたの家が代々善行を積んで育てたものだからこそ、財運と家内安全の効果があるのです。大切に家宝として保管してください」

岡本棉は頷いた。岡本家の家訓は善行を積み、この家宝をしっかりと守ることだった。

なるほど、家宝は最高級の法器に相当するのだ。

岡本棉は急いで尋ねた。「粟、うちの今回の災難を解消してくれる?」

家宝はさておき、彼女が一番望んでいたのは家族の安全だった。

彼女は懇願するような目で、手を軽く握りしめ、少し緊張した様子だった。

矢崎粟は「できますよ」と答えた。

肯定の答えを聞いて、岡本棉はほっと息をついたが、突然何かを思い出したように表情が曇った。「それで、報酬は何が必要ですか?私たち岡本家の家宝が欲しいのですか?」

もし矢崎粟が欲しいと言ったら、どうすればいいのだろう?本当に何代も伝わってきた宝物を譲り渡さなければならないのだろうか?

矢崎粟は彼女の表情を見て何を考えているか分かり、笑って言った。「ご安心ください。私はあなたたちの家宝は要りません。これからも善行を積んで、家宝を伝えていってください」

彼女も人の大切なものを奪うようなことをすれば、前の大師と何が違うというのだろう?