傍らの監督はため息をつき、尋ねた。「それで、承諾したのか?」
家族の安全が第一だ。家族のためなら、宝物を手放すのも仕方がない。
岡本棉は首を振った。「その時は迷っていて、決心がつかなかったんです。竜田大師は私が躊躇しているのを見て、連絡先を残して、考えが変わったら連絡してくれと言いました。」
「でも、考えれば考えるほど、何か変だと思いました。竜田大師は家伝の宝物を狙っていたようで、宝物を見ても少しも驚いた様子がなかったんです。だから、他の玄学師に相談してみようと決めました。」
他の玄学師に相談しても解決できなければ、竜田大師に頼むのは遅くはない。
今日は撮影初日で、岡本棉は仕事で来ていた。矢崎粟を見かけて、彼女のバラエティ番組での活躍を思い出し、期待を持った。
岡本棉が予想もしなかったのは、矢崎粟が彼女に会うなり、家で起きた出来事を知っていて、その原因まで正確に言い当てたことだった。
今、岡本棉は今日撮影現場に来て本当に良かったと思っている。
矢崎粟は事情を聞き終わると、深い思索の表情を浮かべた。「確かに不可解ですね。竜田大師は怪しいです。その家伝の宝物を見せていただけますか?」
彼女は竜田大師が宝物を狙っていたのではないかと疑っていた。
竜田大師の出現のタイミングが良すぎる上、求めた宝物が家伝の品だったことも、すべてが計画的だったように思える。
岡本棉はすぐに頷いた。「もちろんです。今すぐ見に行きましょう。」
家での不幸な出来事が次々と起きているので、早く解決したかった。さもないと、家族にまた何が起こるか分からない。
矢崎粟は頷いた。「では、今から行きましょう。田中監督は私たちと一緒に行きますか?それとも休憩に戻りますか?」
田中良太監督は玄学に興味があり、岡本棉の家で何が起きているのか知りたかった。彼は明るく笑って言った。「一緒に行くよ。家伝の宝物も見てみたいしね。」
岡本棉は頷いた。「来ていただけるなら、これ以上ないです。」
三人は車に乗って、岡本家別荘に向かった。
これは豪華な私有別荘で、別荘の裏には美しく設計された小さな庭園があった。
別荘に入ると、矢崎粟は鋭く凶気と吉祥の気の波動を感じ取った。二つの気が融合し、不思議な調和を生み出していた。
岡本棉は二人を宝物室へと案内した。