594 毒を盛る残酷な心

矢崎粟は一つ一つ説明した。「赤毒散は道家が調合した毒薬の一種で、他の丹薬と一緒に服用すれば精神を奮い立たせる効果がありますが、単独で服用すると毒素となり、腎臓で解毒する必要があります。」

「しかし、腎臓はごくわずかな部分しか解毒できず、大部分は体内に蓄積され、他の症状を引き起こします。」

「毒素が完全に除去されないと、体は衰弱し続け、尿毒症の症状によく似ていますが、現代医学では診断も根治も難しいのです。」

矢崎粟が話し終えると、病室は静寂に包まれた。

小島一馬も少し驚いた様子だった。

明らかに、この毒殺未遂は単なる些細な事件ではなく、どんな恨みがあってこのようなことをするのか分からなかった。

田中凛は目を真っ赤にして、歯を食いしばって言った。「どうしてそんなに残酷なことができるの？」

田中浩は娘が震えているのを見て、このような残酷な現実を娘に背負わせたくないと思い、娘の手の甲を優しく叩いた。「凛、お父さんは大丈夫だから、悲しまないで。」

この数年間、病身を抱えながら、彼はもう生きる希望を失っていた。何度も全てを終わらせようと思った。

毎回、娘の明るい笑顔を見るたびに、彼は生き続けることができた。

言わば、彼の命は娘が与えてくれたものだった。

妻の本田水鳥に対しては、もう完全に失望していた。もし凛の実の父親でなければ、とっくに本田水鳥と離婚して、凛と二人で暮らしていただろう。

残念ながら、本田水鳥から逃れることはできなかった。

田中凛は父親を見つめ、父の目に映る心配そうな表情に気づいた。「お父さん！私は必ずあなたの病気を治す方法を見つけます。良くなってください、私にはあなたしか家族がいないんです。」

田中凛は涙を拭い、強く矢崎粟に尋ねた。「粟、赤毒散には解毒剤があるの？」

矢崎粟はうなずいた。「あります。まず毒素がどれだけ深く侵食しているか確認して、それから解毒の処方を決めます。体の各機能を健康な状態に戻すには、継続的に解毒剤を服用する必要があります。」

「分かりました、私たちは必ず協力します！」田中凛はようやく明るい表情を取り戻し、輝くような笑顔を見せた。

矢崎粟はベッドの側に歩み寄った。「田中おじさん、手首を出してください。法力で脈を診させていただきます。診察中は抵抗しないでください。」