607 二房の反応

小林博は少し笑って、「それは当然だよ。もう長話はしないけど、二人とも病気が良くなったら、必ず病院に来て美緒の看病をするんだよ。分かった?」

矢崎若菜は何度も頷いて、「分かってます、分かってます。よく覚えてます」

小林博は二人を一瞥して、笑いながら去っていった。

彼が完全に矢崎家の玄関を出てから、矢崎若菜の表情が一変し、冷たく言った。「小林博が東京に戻って矢崎美緒の看病をするって情報を、小林家に伝えましょう!」

小林家の者が知れば、きっと小林博を家に帰らせるはずだ。

そうなれば、小林博は必ず小林家の者からの詰問に直面し、私たちのことを追及する時間も余裕もなくなるだろう。

矢崎政氏は目を輝かせ、尊敬のまなざしで矢崎若菜を見つめた。「なんで俺にそんな考えが浮かばなかったんだろう。三兄貴は頭の回転が速いね。表では一つ、裏では別のことを考えてる。見習わないと!」

もし彼がその三分の一でも学んでいれば、小林博に脅されることもなかっただろう。

矢崎若菜は目を転がして、「小林家に言うかどうか決めなさいよ!」

どうせ焦っているのは自分一人じゃない。

矢崎政氏はすぐに頷き、同意して言った。「もちろん小林家に伝えるべきだよ。小林家の二房が矢崎美緒にどう対応するか見てみたいしね!」

前回の病室で、小林家の二房は矢崎美緒に好意的だった。もし彼らが最愛の息子が矢崎美緒に魅了され、仕事を放り出して病室で看病していることを知ったら、小林家の二房はどんな反応を示すだろうか?

矢崎政氏はそこまで考えて、意地の悪い笑みを浮かべた。

彼は自分が毎日悩まされるよりも、小林博の方に問題が起きる方がいい。小林家の二房が小林博を家に連れ帰ってくれれば最高だ。

もし小林博が頑なに病室で矢崎美緒の看病を続けるなら、小林家の二房の矢崎美緒に対する態度も変わるだろう?

矢崎政氏は面白い展開を期待しながら、携帯を取り出して二番目の叔父である小林昌に電話をかけた。これから起こる家庭内の軋轢に耐えられることを願って。

矢崎家と小林家の協力関係が切れてから、小林昌は会社での仕事が減り、海外との商談の任務しか受けられなくなっていた。

海外でこれほど多くの日々を過ごしても商談がまとまらず、彼の気分はますます苛立っていき、小林家に帰ってゆっくり休みたいと思っていた。