彼の言葉を聞いて、小林博は理にかなっていると感じた。
結局のところ、美緒はまだ療養中で、もし風邪を引いて熱を出したら、病気に病気が重なってしまう。
矢崎若菜は溜息をつきながら、「最近また不運が続いていて、奇妙な出来事ばかり起こるの。室内でも毒虫に刺されることがあるし、病室に行ったら美緒に良くないと思うわ。最近は精神状態も悪くなる一方だし、行くのは控えさせてもらうわ」と言った。
小林博は矢崎美緒から矢崎若菜の運気が吸い取られた件について聞いていたので、「あなたの運気が吸い取られたのは、美緒とはあまり関係ないよ。あれは全部あの人が操っていたんだ。道士こそが真犯人だから、美緒と距離を置かないでほしい。彼女はずっと申し訳なく思っているんだ」と慰めた。
矢崎若菜は形だけうなずいて、「はい、分かりました」と答えた。
小林博も矢崎若菜が美緒の付き添いには適していないと感じた。もし彼女の不運が毒虫などを引き寄せて、美緒に害が及んだら大変だ。
この二人とも病室に行けないとなると、小林博は言葉もなく途方に暮れた。
小林博は矢崎若菜を見つめ、冷たく言った。「私が出発する前、どんな約束をしたか覚えているか?美緒をしっかり世話して、少しの不自由もさせないと約束したはずだ」
小林博の詰問するような眼差しに気付いて、矢崎若菜は心の中で怒りを覚えた。
小林博は当時の状況を全く知らない。もし彼が身代わりにされたら、怒るのは当然だろう?
ダメだ、小林博にも矢崎美緒に害された気持ちを味わわせてやらなければ。
矢崎若菜は悔しそうに俯いて、「私が無能だったんです。矢崎美緒の身代わりになって、肋骨を何本か折って、足も骨折して、それでも彼女を守れなかった。ああ!でも、良かったです。今はあなたが戻ってきたんですから、きっと私よりずっと上手く世話ができますよ!」
もう矢崎美緒と関わりたくない。これ以上関係が続けば、また何か悪いことが起きるかもしれない。
「そうだ!美緒のことは頼むよ」矢崎政氏も急いで言った。
小林博は冷ややかに鼻を鳴らし、「私が戻ってきたからには、もうお前たち二人には期待しない。自分のことは自分で考えろ。これからは美緒のことを少しは気にかけろよ」