矢崎政氏は少し考えてから答えた。「さっき叔母さんが気を失って、救急室に運ばれる途中で携帯を落としてしまったかもしれません。探しに行きましょう」
そう言って、矢崎弘に向かって言った。「兄さん、叔母さんの携帯を探してきてください。さっき道で落としたみたいです」
「わかった!」矢崎弘は立ち上がり、外に向かって歩き出した。
小林昌は驚いて急いで尋ねた。「どういうこと?叔母さんが気を失った?今どうなの?」
矢崎政氏はすぐにさっき起こったことを全て説明した。
小林昌は話を聞き終わると、歯ぎしりをしながら怒りを露わにした。「わかった。ずっと叔母さんの側にいてくれてありがとう」
矢崎美緒は本当に厄介者だ。矢崎家が平穏でないのも当然だ。全て彼女のせいだった。
彼女がいるところには必ず問題が起きる。
小林博も頭が悪い。矢崎美緒に母親をこんなに苦しめさせて、育ててやった意味がない。
「いいえ、当然のことです」矢崎政氏は頭を掻きながらため息をついた。
結局、名目上は矢崎美緒の兄なのだから、彼女が起こした問題の責任は少しは負うべきだろう。
小林昌も深いため息をついた。「小林博がお前のように分別があればいいんだが。私たち夫婦もこんなに心配することはないのに」
分別?矢崎政氏は困ったような表情を浮かべた。彼の分別も経験から得たものだ。昔の彼も愚かだった。
小林昌は小林博のことを思い出し、冷たい声で言った。「小林博を呼んでくれ。母が許さないなら、小林家の株式は彼の分はないし、私も息子として認めないと伝えてくれ!」
矢崎政氏は頷いた。「はい、すぐに呼びに行きます」
小林昌は腕時計を見て、時間を計算すると、今は東京の午前三時半のはずだ。さらに続けて言った。「小林博が来たら、お前は家に帰って休んでくれ。ここはもう任せてくれ。一晩中お疲れ様」
「はい、では叔父さん、お先に」矢崎政氏は言い終わると電話を切った。
彼は深く息を吸い込んで、矢崎美緒の病室に向かった。小林博を呼びに行くためだ。
矢崎美緒の病室の前で、矢崎政氏はドアをノックした。
小林博は薬を塗り終わったところで、病室のトイレから出てきて、冷たい表情でドアを開け、矢崎政氏を見て尋ねた。「まだ何か?」
矢崎政氏は頷いて、「叔母さんが気を失ったんです。叔父さんが看病に来るように言ってます」