619 臆病者

「ふん」矢崎弘は彼の言葉を聞いて、突然冷笑を漏らした。

美緒に何も起こさせないために、自分の実の母を気絶させるなんて。どうやら、矢崎美緒は彼の心の中でかなり重要な位置を占めているようだ。

小林博は彼のその冷笑に怒りを覚え、椅子から立ち上がった。「何を笑っているんだ?俺に文句があるなら、殴り合おうじゃないか!」

矢崎弘はちっちっと舌打ちをして、首を振った。「俺はあんたに文句なんか言えないよ。自分の母親まで気絶させるような奴に。俺なんて従兄弟だから、あんたの中じゃ矢崎美緒の指一本にも及ばないんだろうな」

彼はただ見物に来ただけで、自分を危険に巻き込むつもりはなかった。

小林博も冷笑して、「ふん、臆病者め」

「もういい加減にしろよ!」矢崎政氏は呆れて小声で言った。

この二人は病室でまで喧嘩をするなんて、空気が読めていない。