627 廉恥知らず

田中千佳は小林博を睨みつけ、手を上げて平手打ちをお見舞いした。「これでいいでしょう？みんなが矢崎美緒との関係を知ってしまったわ。あなたたちは潔白だと言っていたのに。記者会見でも開いて、外の人たちに説明してみなさいよ！」

彼女は一瞬間を置いて、続けた。「忘れたの？あなたにはまだ婚約者がいるのよ。福井家がこのことを知ったら、あなたの結婚話も台無しよ！」

小林博はようやく我に返り、すぐに福井昭美に電話をかけた。

電話が繋がると、福井昭美は怒りの声で言った。「よくも電話なんかしてきたわね、この鬼畜！私が東京であなたを待っていたことも知らないの？一年も待ち続けたのに、帰ってきても連絡一つよこさないどころか、矢崎美緒のベッドに潜り込むなんて、恥知らずね！恥ずかしくて見ていられないわ。」

彼女は一息置いて、続けた。「よくも電話なんかしてきたわね。私を侮辱するつもり？はっきり言うわ。福井家はこんな結婚なんて望んでいないわ。婚約を解消して、今後一切関わりたくないわ。」

小林博は目を真っ赤にして、恥ずかしさに顔を歪め、思わず叫んだ。「昭美！事情は君が思っているようじゃないんだ。僕と美緒は潔白なんだ。」

福井昭美は舌打ちをして、冷たく言い放った。「しつこく言い訳しないで。あなたを見るだけで吐き気がするわ。従妹に手を出すなんて、本当に最低ね！」

電話は即座に切れ、小林博に返事する機会すら与えず、非常に冷酷だった。

小林博は完全に呆然としていた。

事態は本当にここまで悪化しなければならないのか？たった一本の動画で、婚約者が婚約を解消しようとし、説明の機会すら与えてくれないなんて？

田中千佳は尋ねた。「向こうは何て言ったの？」

小林博は歯を食いしばり、深く息を吸って言った。「昭美は福井家が婚約を解消すると言って、僕を散々罵ったよ。」

田中千佳は「……」

まさに言葉通りの展開になってしまった。

田中千佳は冷ややかな目で小林博を見つめ、尋ねた。「あなたと矢崎美緒は本当に何もしていないの？」

この件について、彼女にはまだ疑いがあった。

もし本当に何もしていないのなら、福井家に頼み込むこともできる。

「何もしていないよ！僕と彼女は同じベッドで寝ただけで、本当に何もしていないんだ。」小林博は崩壊寸前で、目から涙が流れ落ちた。

あまりにも冤罪だった。