矢崎政氏は言った。「もういい、母がどう怒鳴ろうと勝手にすればいい。どうせ俺はもう家にいたくないんだ。母に怒鳴られても旅行に行けるなら、怒鳴られてもいい!」
毎日の夕食時、彼らは散々怒鳴られていた。
会社の株式を奪われる心配がなければ、矢崎政氏は本当に母親と絶縁したいと思っていた。
矢崎若菜も冷笑して言った。「母さんはますます分別がなくなってきたわ。おじいちゃんおばあちゃんより若いのに、することがますますおかしくなってきている。いつか私たちが母さんを見捨てたら、母さんも気が済むでしょうね」
毎日怒鳴られ、際限がなかった。
彼は会社の寮に住むことを選び、母親のいる場所には行きたくなかった。
「母さんが私たちに腹を立てて、自分から私たち三人と絶縁してくれればいいのに。そうすれば、毎日帰って母さんと夕食を食べなくて済むのに」矢崎政氏はため息をつきながら、空想した。
矢崎若菜は首を振って言った。「それは無理よ。母さんの周りには矢崎美緒しかいないし、母さんは矢崎美緒のことをそれほど信用していないから、私たち全員と絶縁することはないわ。母さんはまだ八つ当たりする相手が必要なの」
彼ら三人は不運な八つ当たりの対象だった。
「はぁ!」矢崎政氏は深いため息をつき、布団に潜り込んで横になり、怒りを含んだ声で言った。「もういい、これからも粟の写真を投稿し続けるぞ。誰が怒ろうと勝手にすればいい!」
矢崎若菜は頷いた。「私もそうするわ」
別の部屋では。
矢崎粟は部屋のテーブルに座り、パソコンの動画を見下ろしていた。
動画には矢崎美緒の愚痴がいくつも収められており、高画質で矢崎美緒の表情まではっきりと映っていた。
彼女はそれを保存し、必要な時に公開することに決めた。
矢崎粟は小林美登里がこれを見たときの表情がとても楽しみだった。きっと面白い反応になるだろう。
一晩休んだ後、矢崎粟たちは再び出発した。
今回の目的地は霊木の谷だった。
彼らは車を運転し、車にはキャンプ用品をたくさん積んでいた。今夜は霊木の谷で一晩過ごす予定だった。
矢崎粟は車の中で、外界の法力の波動を感じ取っていた。
彼女は彼らの後をずっとつけていた玄学師が姿を消したことに気付いた。霊木の谷の範囲に入ってから、その人物は消えていた。
この玄学師はおそらく背後にいる人物が派遣した者だろう。