二人は何の契約も結んでいないし、法的関係もないので、澤蘭子が矢野家の株式を分けてもらえるはずがない。
矢野朱里は覚えている。子供の頃、矢野家で澤蘭子に正座させられた時、澤蘭子はまるで矢野家の主人のように騒ぎ立て、将来矢野家の株式は朱里には分配しないと言い、諦めろと言った。
ここ数年、澤蘭子は矢野家の人脈を頻繁に利用し、まるで自分が矢野家の会長であるかのように振る舞っていた。
今となっては、澤蘭子は澤家で株式を持っていないどころか、わずかな財産さえも分けてもらえないことが分かった。
「はっ、お義姉さんはまだ兄さんが彼女を愛していると思っているのね!本当に厚かましいわ」岡本英恵は思わず皮肉を言った。
矢野誠也が言った。「澤蘭子が受け入れられなくても、私たち矢野家が受け入れさせます。結局、私たち矢野家も甘くはありませんからね!」