弱い者だけを狙うのは、原東のスタイルではない。
矢崎粟は頷いて、また尋ねた。「もし彼が逮捕を拒否したら?他の信者たちと共謀して罪を逃れようとしたら、玄学管理所はどうするんですか?」
彼女は玄学管理所がどこまでできるのか知りたかった。
もし玄学管理所が最後まで持ちこたえられないなら、矢崎粟は最悪の事態に備えて、他の方法を考えなければならない。
原東は言った。「逮捕を拒否するなら、我々は実力行使に出る。一対一では玄学師に勝てないかもしれないが、我々には科学技術で開発された武器がある。これらの武器は玄学師と科学者が共同で開発したもので、過ちを犯した玄学家に対処するためのものだ。」
彼は一旦言葉を切り、続けた。「彼がまだ人間の肉体である限り、これらの武器から逃れることはできない。信者たちが邪魔をするなら、順次罪状を確定して、一緒に逮捕する。」
矢崎粟はそれを聞いて、心の中で納得した。
実は彼女も予想していた。玄学管理所には独自の武器があり、それが勝利の鍵となる。
今の矢崎粟なら、通常の銃器は避けることができるが、他の特殊な武器に遭遇したら、どうなるかわからない。
彼女の体は普通の人間と同じで、鋼鉄のように鍛えられてはいなかった。
原東は言った。「私が職にある限り、玄学管理所は相手と戦うあなたを支援し、決して後退しない。」
矢崎粟は頷いて、「それなら安心です」と言った。
一人の力は、やはり小さすぎる。
玄学管理所の存在は、非常に重要だ。
二人が意見の一致を見た後、矢崎粟はタブレットを手に病室の入り口の監視カメラを見続け、小林悠一からの呼び出しに備えた。
二十分後、矢崎粟の電話が鳴った。
彼女は原東に向かって言った。「電話に出ます。小林社長からかもしれません。」
携帯を取り出して見ると、案の定小林悠一からの電話だった。
矢崎粟は電話に出て、相手に向かって言った。「小林社長、こんにちは。何かご用でしょうか?」
小林悠一は病室でスピーカーフォンを使っており、矢崎粟の慎重な態度に満足していた。
彼は言った。「粟、小林美登里が玄学師を連れてきて小林瑞貴の呪いの毒を解くそうだ。私はこういった事はよく分からないから、君にも来て見てもらいたいんだが、来てくれないか?」
矢崎粟はすぐに答えた。「はい、今から車で向かいます。十分後には到着します。」