674 藤村慎一を殺す

岡本秋生は試すように口を開いた。「部長、この事件は証拠が不十分です。もう少し証拠を集めてから、有罪を確定したいと思います。」

「何を集める必要がある?ビデオ証拠があるじゃないか?他に何が必要なんだ?」吉田恭一は即座に問い詰めた。

彼の冷たく鋭い視線が岡本秋生に向けられ、岡本秋生は頭を下げ、部長との目を合わせる勇気がなかった。

原東は仕方なく首を振りながら言った。「この件はとっくに処理すべきだったと思います。逮捕した日に人的証拠も物的証拠もあり、呪術師も認めていたのに、二部がずっと抑えていて、私にもどうしようもありませんでした。」

「原東、お前!」岡本秋生は驚いた。原東が部長の前で自分の悪口を言うとは思わなかった。

部長の疑わしげな眼差しを感じ、岡本秋生の心臓が激しく打った。「部長、私はただ手順通りに進めたいだけです。この事件の真犯人を見つけるのは簡単ではありません。もし情報が漏れて真犯人が逃げてしまったら困ります。事件の機密性を考慮しているだけなんです。」

岡本秋生は空虚な説明をした。この答えの説得力が弱いことは自分でもわかっていたが、それしか言えなかった。

吉田恭一は冷ややかに鼻を鳴らした。「わかった。この事件は今日から処理する。三日以内に真犯人を突き止めろ。さもなければ、お前たちに良い目は見させないぞ!」

「はい!」原東と岡本秋生は揃って答えた。

吉田恭一は続けて言った。「呪術師が狙った数人の中には、小島家の長男がいる。小島家はこの件を注視している。お前たち二つの部で一緒に真犯人を探せ。先に見つけた方が、将来私の後任となる。」

後任の話が出て、岡本秋生は心の中で喜んだが、表情には出さなかった。

「はい!」原東と岡本秋生は再び揃って答えた。

部長室を出ると、岡本秋生は嘲るように言った。「なかなかやるじゃないか。」

午後に矢崎家と森田家の人々も来ていたと聞いた。今や小島家も巻き込まれ、この事件の解明に乗り出している。

これは間違いなく原東と何らかの関係があるはずだ。

原東は少し笑って、「お褒めにあずかり光栄です!」

そう言うと、振り返ることもなく立ち去った。

原東の背中を見つめながら、岡本秋生は歯を食いしばり、頭を抱えた。