原東は笑みを浮かべ、「君の言う通りだ。今日来たのは藤村慎一襲撃事件について話したかったんだ」
ここ数日、一部は本当に忙しかった。
三つのチームが交代で調査し、二部の妨害を防ぎながら、二部の連中と口論もしなければならず、まさに目が回る忙しさだった。
矢崎粟は頷き、真剣な眼差しで原東を見つめた。
原東は声を落として言った。「我々一部が証拠を探している間、二部の連中は我々の進行を遅らせようと必死で、偽の証拠まで作り出してきた。証拠の真偽を見分けるのに、かなりの時間を費やしてしまった」
現時点で得られた証拠は、まだ非常に限られている。
二部が仕掛けた紛らわしい証拠も加わり、澤蘭子を逮捕しても、彼女が唯一の犯人だと断定できない状況だ。
そうなると、量刑も軽くなる可能性が高い。
これが原東にとって最も納得できない点だった。
「大丈夫、まだ調査を続ける時間はある。必ず澤蘭子に相応の罰を与えなければならない」と矢崎粟は言った。
「二部の連中に他に怪しい動きはないのか?」矢崎粟は二部がそんなに大人しいはずがないと思っていた。
原東はすぐに答えた。「もう一つ気になることがあって、監査官が巡回中に、二部の連中が藤村慎一の収容場所をよく観察していることに気付いた。我々の交代時間や人員配置まで研究していて、何かを企んでいるようだ」
二部の連中は絶対に悪だくみをしているに違いない!
何をしようとしているのかはわからないが、藤村慎一に供述を変えさせようとしているのか?それとも藤村慎一に他の関係者を引き込ませようとしているのか?
原東は一部の部下たちに藤村慎一を厳重に監視するよう命じ、二部の連中が接触する機会を与えないようにした。食事や尿瓶の交換でさえ、何度も検査してから中に入れるようにしていた。
原東の経験からすると、二部は必ず動き出すはずだ。
矢崎粟は冷笑し、目に理解の色が浮かんだ。「奴らの狙いはわかった。恐らく藤村慎一を殺して、その罪を私になすりつけようとしているんだろう。藤村慎一の背景は調べたか?」
原東は頷いて言った。「藤村慎一は呪術王藤村邦夫の師弟だ。彼は藤村邦夫以上に師匠の藤村敦史に可愛がられていて、流派の中では藤村慎一が藤村敦史の私生子ではないかという噂があった。その噂も根拠のないものではないようだ」