もう一つ、背後にいる人物が報復されれば、矢崎粟は手がかりを辿って、その人物が誰なのかを知ることができる。
結局のところ、早く自分の敵が誰なのかを知ることができれば、勝利の確率も高くなるのだ。
矢崎粟はしばらく考えて、自分の小さな巾着を取り出した。
巾着にはぎこちなくリンゴが刺繍されていた。これは今日の午後に矢野朱里からもらったもので、矢崎粟がこの巾着を持っていれば、ずっと無事でいられますようにという願いが込められていた。
原東も巾着のリンゴを見て、思わず笑みを浮かべた。「なかなか風変わりな巾着だね」
矢崎粟は軽く笑って、特に説明はしなかった。
彼女は巾着の中を探って、二枚の護身符と一つの四角い白玉のペンダントを見つけた。
このペンダントには吉祥の気が宿っており、一度の災難を防ぐことができる。まさに藤村慎一のような状況に適している。
護身符も、藤村慎一が不慮の事故で殺されるのを防ぐためのものだ。
矢崎粟は説明した。「この護身符はあなたと藤村慎一で一人一枚ずつ、ペンダントは藤村慎一に渡して、自分の身を守るように言ってください。そう簡単に殺されないように」
彼は何人かを襲撃したが、殺人は犯していない。前科がなければ、死刑にはならないだろう。
もし牢獄で死んでしまったら、大損失だ。
原東は自分にも護身符が与えられるとは思っていなかったので、喜色を浮かべて「矢崎大師の玄学の腕前は噂に聞いていました。ずっと一枚欲しいと思っていたのですが、本当にいただけるとは。ありがとうございます!」
鈴村薫と川上孝史が相次いで事故に遭ったことで、原東は玄学の力を軽視してはいけないことを痛感していた。
彼は道院でも平安符を求めたが、それらの符紙は飾りものにすぎず、まったく効果がないように感じた。
やはり矢崎粟の符紙こそが安心できる。
矢崎粟は軽く笑って「お体に気をつけてください。途中で他の人に引き継ぐことになるのは避けたいので」
もし原東が死んでしまえば、玄関管理所は二部部長の手に落ちて、完全に道家協会の傀儡となり、本来あるべき正義を失ってしまうだろう。
「ご心配ありがとうございます」原東は口角を上げ、品物をスーツのポケットにしまった。