別のオフィスで、矢崎粟は澤蘭子の携帯電話を手に取り、彼女が削除した多くのメッセージと通話履歴を復元したが、有用な情報はほとんど得られなかった。
その人物が社会の各界に広い人脈を持つ、影響力のある存在だということだけが分かった。
矢崎粟たちもその人物が堀信雄だと断定することはできなかった。
矢崎粟はそれらの電話番号の位置を特定しようとしたが、何かによって信号が遮断されており、位置を特定することができなかった。
取調官は澤蘭子にメッセージと電話番号を見せ、背後にいる人物の有効な情報を得ようと、何度も尋問を繰り返した。
しかし残念なことに、翌朝になってもその人物の情報は得られなかった。
澤蘭子は決意を固めていた。自分が犠牲になっても、その人物を明かすことはない、まるで魔が差したかのように。
朝九時、原東は現在得られている証拠を持って、吉田課長のオフィスのドアをノックした。
吉田課長は原東を大いに褒め称え、速やかに書類を上級機関に提出し、澤蘭子の罪を確定するよう指示した。
原東はもう数日尋問を続けたいと思っていたが、澤蘭子の状態を考えると、さらに尋問を続けても背後の人物に関する有効な情報は得られそうにないと判断し、諦めることにした。
彼は証拠と供述書を上級裁判所に移送し、判決を待った。
この事件は小島家からの催促もあり、各方面からの注目も集めていたため、裁判所は迅速に審理を行い、二日後には判決が下された。
澤蘭子の殺人未遂罪が成立した。
しかし、死傷者が出なかったため、軽い刑しか言い渡せず、懲役三年の実刑判決となり、矢崎粟たち各人に対して五万円の精神的損害賠償金の支払いを命じられた。
また、澤蘭子が玄学界と結託して犯行に及んだことを考慮し、通常の刑務所では収容できないと判断され、特殊刑務所での服役が命じられた。
特殊刑務所には、玄学師のような特殊な人物が収容されている。
外壁は三メートルの高さがあり、外壁から二十メートル離れた場所まで鉄条網で厳重に囲まれており、刑務所内部にも特殊な陣法による防護があり、中では法力を使うことができない。
たとえ誰かが澤蘭子を救出しようとしても、相当な労力が必要となる。
背後にいる人物の情け容赦のない性格からすれば、澤蘭子のような駒一つを救うためにそれほどの労力を費やすはずがない。