701 牢屋に入りたくない

彼女の息子は、絶対に彼女の支配から逃れることはできない。

矢野徹は口元に笑みを浮かべ、「それはあなたが私を見つけられればの話だ。明日にでも辞職して、誰も知らない場所に行くよ。どちらが長く持ちこたえられるか見てみようじゃないか。あなたが私より長生きすることを願うよ。そうでなければ、あなたが死んだら、私は東京に戻るからね」

親孝行を強制できる人がいるとでも思っているのか?

澤蘭子は下唇を強く噛みしめ、すぐに血が滲んだ。

長男は完全に制御不能になってしまった。

しかし、まだ次男がいる。

彼女は矢野常の方を向いて、「常、ママにはもうあなたしかいないの。今回だけママを助けてくれれば、これからはあなたの言うことを何でも聞くわ。誰と結婚したいのか、それもあなたの自由よ」

今一番重要なのは刑務所に入らないこと、他のことは何とかなる。

矢野常は顔をそむけ、何も答えなかった。

矢野朱里は舌打ちをして、「誰があなたの言うことなんか聞きたいものか。関係を切ったんだから、もう連絡も取らないで。刑務所でゆっくり過ごしなさい!」

澤蘭子は矢野常を睨みつけ、「息子よ、ママはあなたをここまで育ててきたのに、ママを助けたくないの?」

矢野常は歯を強く噛みしめた。

彼は分かっていた。母親に希望を与えれば、刑務所を出た後も付きまとわれることになる。心を鬼にして母親の期待を断ち切るしかなかった。

矢野常は言った。「澤蘭子、私たちは今生二度と会わないことを願います。もしこれからも私に付きまとうなら、あなたのやったことを全てメディアに話します。私のファンもあなたを許しませんよ。よく考えなさい!私にはあなたという母親はいません」

澤蘭子は怒りで必死にもがき、「この畜生、私がこれまで育ててきたからこそ、あなたは影帝になれたのよ!世間の目なんか恐れると思う?年を取ったら私の面倒を見ないつもりなの?そうなら私が家まで来て罵ってやる。あなたは東京にいるでしょう?あなたが東京にいる限り、私も付きまとい続けるわ」

彼女は唾を飛ばしながら話し、顔は歪んでいた。

傍らにいた原東までため息をつかずにはいられなかった。どの家庭にも悩みはあるものだ。矢野家は表面上は華やかに見えたが、まさかこんなにも信じがたいことが起きていたとは。