702 難関を乗り越える

澤蘭子は藤村慎一を利用して、矢野朱里たちを危険に晒したことで、彼女の怒りを買うことになった。

澤蘭子は怒鳴って言った。「嘘つきね。私は信じないわ。私たちの関係を壊そうとしないで」

彼女はもう取り繕う余裕もなく、ただ矢崎粟の言葉を否定したかった。

矢崎粟は原東に頷いた。

原東は手振りで、拘束している二人に澤蘭子を連行するよう指示した。

二人はすぐに動き出し、澤蘭子は必死にもがきながら叫んだ。「助けて!矢野寿さん、矢野徹さん、助けて!私は冤罪よ、助けてください!」

澤蘭子は遠くまで引きずられ、もう状況が変わらないと悟ると、罵り始めた。「この矢崎粟のクソ野郎、陰険な矢野寿、薄情な矢野徹、覚えていなさい。絶対に仕返しするわ。待っていなさい、覚悟しなさい……」

矢野寿は彼女が連行されるのを見て、深いため息をつき、表情も幾分落ち着いた。

彼は原東と矢崎粟に向かって言った。「わざわざ来ていただき、ありがとうございます。後のことはお任せします」

「私たちの仕事です。ご心配なく」原東は微笑んで頷き、矢野寿と握手を交わした。

矢崎粟が言った。「ご安心ください。彼女のした事は最低でも懲役三年です。これからは矢野家も少し楽になれるでしょう。朱里も安心して矢野家に戻れます」

矢野寿は頷いた。「粟、時間があったら家に遊びに来なさい。矢野おじさんの周りには君たち良い子たちしか残っていないんだから」

人生の半分を、澤蘭子の存在によって無駄にしてしまった。

幸い、矢野家を守り抜くことができた。

子供たちも無事で、これからの生活はきっとますます幸せになるだろう。

矢崎粟は軽く頷いた。「では、私たちは失礼します」

別れの挨拶を交わした後、矢崎粟と原東は部隊を率いて車に乗り込み、玄学管理所に戻って事件の処理にあたった。

居間には矢野朱里、矢野徹、矢野寿だけが残った。

矢野徹は矢野寿の前に進み出て、深々と一礼した。「矢野社長、私がここにいるべきではないことも、ご心配をおかけする資格もないことも分かっています。ただ一言、これまでのご指導に感謝申し上げたいと思います」

矢野寿の寛容な心がなければ、彼は成人まで生きられなかったかもしれない。

矢野家の家主として、矢野寿には彼を不慮の事故で亡くすことができる方法がたくさんあったはずだが、そんなことは一度も考えなかった。