矢崎粟も明らかに攻撃を感じ取った。
彼女は両手を素早く動かし、空中で朱砂筆を使って、無紙符を描いた。
傍らの藤田川は少し驚き、思わず小声で呟いた。「彼女が伝説の空中符を習得するなんて、この才能は…」
この空中符は、大円満境界に達してはじめて覚醒できる技能だった。
この技能により、玄学師は時空の制限を超え、敵に対して遠距離攻撃を仕掛けることができる。
藤田川も学んでいたが、ここ数年でようやく習得できたものだった。
しかし矢崎粟は、二十歳そこそこでこの技能を習得してしまった。
矢崎粟は数回で符を描き終え、攻撃位置を特定し、攻撃を仕掛けた。
赤炎の火!
紫色の光を放つ心火が大呪術師藤村敦史の胸元で咲き誇り、彼の体は意識よりも早く反応し、即座に指を伸ばして心臓の経穴を封じた。
藤村敦史は大きく驚いた。
このような技は見たことがなく、空間を突き破って現れるとは。
しかも、今は万メートルの上空にいるというのに!
矢崎粟は隣の藤田川を見て、「藤田師兄、あとはお願いします」と言った。
彼女はこれから解毒術に専念しなければならない。
早急に呪虫を追い出さなければ、小林瑞貴の命が危険にさらされる。
藤田川はすぐに頷き、手を伸ばして印を結び、自身の法力を小林瑞貴の体内に巡らせた。
矢崎粟は小林瑞貴の脳内にバリアを設置し、法力が脳に影響を与えないようにした。
二人の実力が高くなければ、小林瑞貴の脳は粉々になっていたかもしれない。たとえ呪虫を追い出せたとしても、小林瑞貴は一生植物人間になっていただろう。
藤田川の法力は徐々に強まり、藤村敦史の力を小林瑞貴の体内から追い出していった。
すぐに、藤田川は小林瑞貴の体に防護壁を張った。
これで、藤村敦史の呪術はもはやこの防護壁を突き破ることができない。
矢崎粟は感嘆の声を上げた。「藤田師兄、あなたが守ってくれると安心です。やはり実力は凄まじいですね!」
もし彼女があの人と戦えば、十分では終わらないだろう。
しかし藤田川はわずか数十秒で済ませた。
この実力に矢崎粟は羨ましさを感じた。もし彼女がいつかこのような腕前を持てれば、あの人さえも恐れることなく、直接討伐に向かうことができる。
おそらく、これが藤田川の自信の源なのだろう!