矢崎粟は矢崎政氏たちに住所を教えると、矢野朱里たちと先に立ち去った。
しばらくすると、矢崎粟たちは別荘に集まった。
矢崎粟は給湯室に入り、藤田川たちにお茶を一杯ずつ注ぎ、途中で買ったお菓子も出してきた。
「このクッキー、とても美味しいわよ!」矢野朱里は笑顔で言った。
藤田川は微笑んで、実際に一つ取って食べてみると、矢野朱里の驚いた目の前でゆっくりと言った。「確かに美味しいね。中華街で売っているものより美味しい。」
矢野朱里は目を見開いたまま、藤田川を見つめた。
彼女の中で、藤田大師は俗世間とは無縁の存在だと思っていたので、さっきは単なる社交辞令のつもりだったが、まさか大師が本当に食べてくれるとは思わなかった。
矢崎粟は笑って言った。「朱里、そんなに驚かないで。藤田師兄は中華街でお菓子屋さんを経営していて、普通のお菓子職人も及ばないほどの腕前なのよ。」
「えっ?すごく驚いた!」
矢野朱里は興奮してお菓子を手に取り、藤田川としばらく話し込んだ。
しばらくすると、森田廣たちも到着した。
彼らが入ってきて、みんなが楽しく話している様子とテーブルの上のお茶菓子を見ると、羨ましそうな目をしていた。
いつか自分たちもこんな待遇を受けられるのだろうか!
森田廣は咳払いをして、落ち着かない様子で入室し、みんなに向かって一礼して「お邪魔します!」と言った。
「邪魔だって分かっているなら来なければいいのに!」
矢野朱里は容赦なく彼を非難した。
森田廣は苦笑いを浮かべながら、矢野朱里の隣に座ろうとしたが、矢野朱里は冷たい表情で言った。「あなたたち四人はプラスチックの椅子に座って。ソファには座らないで。嫌なら入らないで。」
ここは粟の別荘なのだ。
なぜ彼らにそんな良い待遇をする必要があるのか?
矢野朱里の視線の先に、矢野常も壁際に置かれた四つのプラスチック椅子を見つけた。ソファからはかなり離れていたが、それでも満足していた。
しつこく付いてきて一緒に話せるだけでもありがたいことだ!
矢崎政氏と矢崎若菜も特に意見はなかった。
車椅子に座った矢崎若菜は、みんなに微笑みかけた。
四人が座ると、矢崎粟は尋ねた。「空港で重要な話があると言っていたけど、今なら話せる?」