矢崎粟は矢崎政氏たちに住所を教えると、矢野朱里たちと先に立ち去った。
しばらくすると、矢崎粟たちは別荘に集まった。
矢崎粟は給湯室に入り、藤田川たちにお茶を一杯ずつ注ぎ、途中で買ったお菓子も出してきた。
「このクッキー、とても美味しいわよ!」矢野朱里は笑顔で言った。
藤田川は微笑んで、実際に一つ取って食べてみると、矢野朱里の驚いた目の前でゆっくりと言った。「確かに美味しいね。中華街で売っているものより美味しい。」
矢野朱里は目を見開いたまま、藤田川を見つめた。
彼女の中で、藤田大師は俗世間とは無縁の存在だと思っていたので、さっきは単なる社交辞令のつもりだったが、まさか大師が本当に食べてくれるとは思わなかった。
矢崎粟は笑って言った。「朱里、そんなに驚かないで。藤田師兄は中華街でお菓子屋さんを経営していて、普通のお菓子職人も及ばないほどの腕前なのよ。」