手紙の真ん中に、文字が書かれていた。
【差出人:無名氏】
【宛先:矢崎さん】
その文字は習字帳から練習して書いたかのように、とても整然としていて、特に研究する価値はなかった。
矢崎粟も何の手がかりも見つけられなかった。
彼女は手紙を鼻の下に当てて嗅いでみると、血の臭いがした。
このインクは……血で作られているようだ。
彼女は確信していた。相手は適当にごまかしているわけではなく、むしろ背後の人物よりもさらに恐ろしい、極度に血なまぐさい人物なのだと。
藤田川も手紙を受け取り、外側を見回して、「開けていいかな?」と言った。
やはり彼に手紙を開けてもらおう!
もし何か気持ち悪いものや恐ろしいものが出てきても、すぐに防げるからだ。
「いいわ」矢崎粟は軽く頷き、異議を唱えなかった。