手紙の真ん中に、文字が書かれていた。
【差出人:無名氏】
【宛先:矢崎さん】
その文字は習字帳から練習して書いたかのように、とても整然としていて、特に研究する価値はなかった。
矢崎粟も何の手がかりも見つけられなかった。
彼女は手紙を鼻の下に当てて嗅いでみると、血の臭いがした。
このインクは……血で作られているようだ。
彼女は確信していた。相手は適当にごまかしているわけではなく、むしろ背後の人物よりもさらに恐ろしい、極度に血なまぐさい人物なのだと。
藤田川も手紙を受け取り、外側を見回して、「開けていいかな?」と言った。
やはり彼に手紙を開けてもらおう!
もし何か気持ち悪いものや恐ろしいものが出てきても、すぐに防げるからだ。
「いいわ」矢崎粟は軽く頷き、異議を唱えなかった。
彼女は矢野常に尋ねた。「この手紙とどのくらい接触していたの?できるだけ詳しく教えて」
矢野常は少し考えてから、ゆっくりと話し始めた。「この手紙は昨夜、清掃のおばさんが持ってきてくれたんだ。受け取ってから部屋のテーブルの引き出しに入れておいて、午後に君たちが空港に行くと知って、ずっと胸ポケットに入れていた。午後は約3時間ほど身につけていたよ」
矢崎粟は眉をわずかに寄せたが、何も言わなかった。
藤田川は静かに手紙を開封し、中から一枚の便箋が現れた。便箋には赤い影のようなものがあり、何か言葉が書かれているようだった。
彼は手紙を広げ、つぶやいた。「これは南鷹秘術だ!なぜこの秘術が再び現れたんだ?もしかして……」
あの人は本当は死んでいなかったのか?
もしそうだとすれば、この世界は混乱に陥るだろう。
矢崎粟は彼の様子を見て、心が沈んだ。
師匠がこんな様子を見せるのは初めてで、事態は深刻そうだった。
藤田川は我に返り、便箋を開いてテーブルの上に平らに置いた。
傍らの矢野朱里も覗き込んで見たが、驚いて声を上げ、顔を真っ青にして、「まあ!これは一体何なの?」
矢崎粟は便箋に目を落とした。
便箋には髑髏の図が印刷されており、その上に赤い文字で一文が書かれていた。
矢崎粟の推測が正しければ、このインクも人血だった。
この人血からは濃い邪気が漂っており、人々の背筋が凍るような、ぞっとするような感覚を引き起こした。
「はぁ!」