805 言い訳

二人の再会の過程は、川上孝史がカメラで記録していた。

彼はこの出来事を素材として、メディアに提出し、視聴者への警鐘とする予定だった。

突然現れた'白馬の王子'に対して、若い女性も警戒すべきだと。

間もなく、二人の再会の動画がネットにアップロードされ、大きな注目を集めた。

【えっ?このおじさんが堀首席なの?老けてて不細工じゃない…】

【不倫する女たちは、一体何に惹かれたんだろう…】

【矢野常のお母さんと田中凛のお母さんは目が見えてなかったの?】

【動画の女性は田中凛のお母さんだって。その場でショックで気を失って、自分が騙されていたことに気付いたらしい。】

【もう二度と玄学師の年齢は信じない。紛らわしすぎる。】

【矢崎粟も老妖怪なんじゃない?】

【忘れたの?矢崎粟の兄たちはまだ20代よ。彼女が老妖怪なわけないでしょ。】

【騙された女たちは自業自得だけど、生まれた子供たちは可哀想。田中凛や矢崎美緒みたいに、自分の父親がこんな人だと知ったら、きっと辛いだろうね…】

【田中凛も可哀想だよね。】

【田中凛がこの件で芸能界を引退したって聞いたよ。】

下の方では様々な議論が飛び交い、みんなの関心は被害者に向けられ、堀首席を非難する人はほとんどいなかった。

この動画は、トレンド1位にまで上り詰めた。

本田水鳥は帰宅後、親戚や友人からの問い合わせの嵐に見舞われ、携帯は鳴りっぱなしだった。

彼女は携帯の電源を切って、やっと静かになった。

先ほど彼女が急いでメッセージに目を通したところ、多くの人が冷やかしたり皮肉を言ったりしており、拝金主義の女だから騙されて当然だとか、耳の痛い言葉ばかりだった。

本田水鳥は予備の携帯を開いて、トレンドランキングを確認した。

彼女は胸がドキッとした。「あの日の出来事が公開されたの?」

堀信雄と喧嘩した時、誰かが動画を撮っているのに気付いていたが、その時は他のことで手一杯で気にしていなかった。

まさか全部暴露されるとは。

堀信雄のことを考えると、まだ吐き気がする。

予備の携帯の連絡先には実家の家族しか登録されていなかった。本田水鳥がトレンドを見ていると、母親の竜田淳子から電話がかかってきた。

「お母さん、何かあった?」

もしかして両親もネットの噂を知ったのかしら?