782 切り札

森村邦夫は二人をすぐにも倒せそうだと感じ、心の中で得意げになっていた。

彼には自信があった。この二人は邪気の洞窟の相手ではないと。

藤田川は表情を引き締め、何も言わなかった。

森村邦夫は二人が警戒している様子を見て、冷笑を浮かべた。「矢崎粟、お前はすぐに私の邪気の洞窟に飲み込まれ、白骨になるだろう。逃げられると思うな!藤田川、分別があるなら自ら原神力を消し、その体を私に差し出せ。そうすれば苦しい戦いを避けられるぞ」

彼はまだ慈悲深かった。

藤田川の苦痛は免除できるが、矢崎粟は決して楽にはさせない。

藤田川は相変わらず平然とした様子で、森村邦夫を無視した。

彼は矢崎粟の方を見て、彼女の言葉を待った。

矢崎粟は彼に安心させるような目配せをした。「先輩、ご心配なく。彼は勝ったと思い込んでいますが、それは単なる妄想です。私たちにも切り札がありますから」

「お前にも切り札がある?ふふふ……」森村邦夫は思わず笑った。「じゃあ、その切り札を見せてもらおうか!」

彼は自分の邪気の洞窟に勝てるものなどないと信じていた。

しかし彼の目は、依然として鋭く矢崎粟の周りを見つめ、彼女の切り札が一体何なのかを確認しようとしていた。心の中で安心したかったのだ。

矢崎粟も少し笑った。「時間稼ぎをしているのはあなただけだと思っているの?偶然にも、私も時間稼ぎをしていたの。ちょうど良いタイミングで、私の切り札も到着したわ」

そう言って、矢崎粟は隠れた場所に向かって叫んだ。「みんな、出てきて!」

すると、原東と川上孝史が特殊部隊を率いて暗がりから現れた。

全員が特製の防護服を着て、手には光り輝く銃を構えていた。

数十丁の銃口が森村邦夫に向けられ、一気に緊迫した雰囲気となった。

原東は矢崎粟の側まで歩み寄り、彼女に頷いた。

森村邦夫は全ての様子を見終わると、顔が引きつるほど笑い、思わず矢崎粟に尋ねた。「矢崎粟よ矢崎粟、何か切り札があるのかと思えば、死にに来る連中を呼んだだけか。笑わせてくれる」

無駄な心配をしていたものだ。

この程度の雑魚が切り札だというのか?

矢崎粟は相変わらず笑みを浮かべたまま、森村邦夫に尋ねた。「あなたは、これらの銃を全く恐れていないようですね?」