田中凛は冷たく鼻を鳴らし、「言わないと分からないわ。3秒あげるから、それでも言わないなら切って着信拒否するわよ」
「そんなことできるもんですか!私を着信拒否したら、あなたのお父さんのところに行って、毎日うるさく騒ぎ立てますよ。病気の療養なんてできなくなるでしょうね!」本田水鳥は開き直ったような態度で言った。
田中凛の弱みは田中浩だった。
だからこそ、彼女は何度も田中凛に妥協させることができたのだ。
その言葉を聞いた後、田中凛の態度は案の定軟化した。「じゃあ言いなさいよ。今回はいくら欲しいの?」
「5000万円」本田水鳥ははっきりと言い切った。
その言葉を聞いて、田中凛は思わず笑い出した。「随分と私のことを買いかぶってるわね。私が事務所をクビになったの知ってるでしょう?そんなお金持ってるわけないじゃない」
「知りませんよ。借金してでも用意してください」本田水鳥は脅すように言った。
彼女は手元にあったお金を実家に持っていかれてしまい、田中凛に金を要求するしかなかった。
田中凛は平然と言った。「お金が欲しいなら、直接会って話しましょう。明日の午後3時にカフェで会いましょう。来なければ、その分お金が浮くわね」
「この生意気な娘め、会って何をするつもり?」本田水鳥は警戒心を抱きながら尋ねた。
もしかして何か仕掛けがあって、自分を捕まえようとしているのではないか?
田中凛はうんざりした様子で言った。「会うって言っても、警察に捕まえられるわけないでしょう?あなた何か罪を犯したの?」
田中凛にそう言われ、本田水鳥は本当に警戒心を解いた。
もし自分が警察に捕まったら、田中凛にとっても良いことはない。行っても大丈夫だろう。
本田水鳥は冷たく鼻を鳴らして言った。「分かったわ、明日行きましょう。キャッシュカードを用意しておいてね。行ったらすぐにカードを渡してもらうわよ。分かった?」
田中凛は冷笑し、目に冷たい光を宿して「ええ」と答えた。
二人は電話を切った。
本田水鳥は得意げな笑みを浮かべ、タクシーで麻雀荘へ向かった。
働かなくても好きな時にお金が手に入る、こんな生活は最高だった。
ただ、恋人が長い間メッセージを返してくれないことが、本田水鳥の心に不吉な予感を抱かせていたが、麻雀に夢中になるとすぐにそのことを忘れてしまった。