852 手助けを申し出る

あの日以来、吉野柔は気分転換のため海外へ行った。

その間、吉野柔は小林博とチャットを試み、自分の気持ちを伝えようとしたが、小林博は見て見ぬふりをしていた。

彼女はひどく傷ついたが、理解もできた。結局、小林博には婚約者がいたのだから。

後に、小林博と福井昭美が婚約を解消したことを知り、また小林博に電話をかけたが、小林博の態度は相変わらず冷たかった。

吉野柔はようやく諦めがついた。

最近、彼女は国に戻り、母親に別の家の息子との見合いを勧められ、承諾した。

しかし、思いがけないことに、ちょうどその時、事態が転機を迎えた。

矢崎美緒から助けを求める電話があり、それによって小林博との新たな接点ができた。

もし彼女が小林博を助ければ、小林博は彼女を違う目で見るようになり、もしかしたら好きになってくれるかもしれない。

吉野柔はそう考えると、さらに興奮した。

小林博は矢崎美緒が最も困っている時でも助けようとしている。これは小林博の人柄の良さを証明している。

吉野柔が助けると言おうとした矢先、小林博が言った。「君は海外から帰ってきたばかりだね。今度、みんなで集まらない?」

「いいわね、以前よく一緒に集まっていた友達も呼びましょう」吉野柔は嬉しそうに答えた。

二人は昔の思い出話に花を咲かせ、十分後、吉野柔は名残惜しそうに電話を切った。

結局、吉野柔は弁護士を頼むという話をする機会を逃してしまった。

でも、それは構わないと思った。

小林博が矢崎美緒を出所させたいのなら、彼女が手を貸せば、小林博は将来きっと彼女の恩を忘れないだろう。

電話を切った後、吉野柔はすぐにリビングへ行き、テレビを見ている母親に甘えるように言った。「ママ、家の弁護士を使わせてもらえない?お願い!」

安藤礼は振り向きもせずに尋ねた。「あなたったら、用事がないときは母親を訪ねてこないくせに。で、弁護士に何をさせたいの?先に言っておくけど、もう友達の尻拭いのために弁護士を使うのは許さないわよ」

「違うわよ!」

吉野柔は鼻を鳴らして言った。「今回は単なる見物よ」

「見物?」安藤礼は娘を上から下まで見て、また尋ねた。「何の見物?」

最近、彼女はよく買い物に出かけていて、上流社会の出来事にあまり関心を払っていなかったため、また何か新しい話題があるのかと思った。