吉野柔は着信を見て矢崎美緒からだと分かり、思わず電話に出たくなくなった。
以前は確かに矢崎美緒とは仲が良かった。
でも今は、矢崎美緒の評判が悪くなってしまい、彼女とは関わりたくなかった。
それに吉野柔は矢崎美緒に四人の兄がいることをずっと妬んでいた。
表面上は仲が良かったが、実際は互いに妬み合っていた。
吉野柔は矢崎美緒が拘置所に連行されたことを知り、家でひどく嘲笑った。
電話が自動的に切れるのを待っていると、しばらくしてまた電話がかかってきた。
それが吉野柔の好奇心を刺激した。
矢崎美緒のプライドの高さからすれば、電話を切られても再びかけてくるということは、きっと急用があるはずだ。
吉野柔はようやく電話に出た。「もしもし、どちら様?」
矢崎美緒の声には切迫感があった。「柔、今すぐあなたの助けが必要なの。お母様の周りには優秀な弁護士がたくさんいると聞いたけど、私の裁判を手伝ってくれる弁護士を紹介してもらえない?」