867 山本紀夫が乗っ取られた

外でドアをノックする音がした。

小島一馬がドアを開け、箱を抱えて入ってきた。「これは私が競売で落とした霊力消解銃だ」

あの状況で、矢崎粟が銃が欲しいという考えを漏らしたら、銃の価格は必ず高騰していただろう。

小島一馬が競り続けていたら、この銃の値段はきっと更に上がっていただろう。

そこで、小島一馬は表向き競売から手を引き、実際には部下に買わせ、最後に届けさせることで、人目を避けることができた。

矢崎粟は銃を手に取り、テーブルに置いた。

彼女は数回で銃を分解し、部品がテーブル一面に散らばった。

小島一馬は目を輝かせ、感心した表情で矢崎粟を見つめた。

矢崎粟は部品を一つ取り上げ、さっと目を通して言った。「この銃は確かに玄学管理所から流出したものではなく、設計図を入手して新たに製作されたものね」

玄学管理所の銃には、特定の場所に特別なマークがある。

この銃にはそれがない。

しかし、この銃の規格と材質は玄学管理所の銃とほとんど変わらず、ただ少し粗雑なだけだった。

最も重要なのは、この銃の箱の中に、二発の弾丸も入っていたことだ。

矢崎粟は弾丸を手に取って確認し、鼻に近づけて匂いを嗅いだ。「この弾丸の製造工程は私たちのものと同じ。ただ霊石の質が少し劣るわ」

彼女は確信できた。設計図が外部に流出したに違いない。

藤田川は微笑んで言った。「つまり、霊力消解銃を製造できる場所があるということですか?」

これは玄学師にとって、災難となる可能性がある。

小島一馬が尋ねた。「粟、誰が漏らしたか分かる?」

矢崎粟は頭を下げ、銃の製造と開発の過程を素早く思い返し、その微妙な違いを見分けようとした。「最初は玄学管理所の設計図が一つだけあって、その設計図を頼りに私たちは少しずつこの銃を改良してきた。この銃の形状と威力は、現在初期段階にとどまっているわ」

つまり、この銃の製作者は工匠の里の出身である可能性が高い。

藤田川が続けて言った。「工匠の里を疑っているんですか?」

矢崎粟はうなずいた。

今日工匠の里に行った時から、何か違和感があった。まるで何かが彼らを密かに窺っているような感じだった。

さらに澄夫の警告もあり、彼女は工匠の里の上層部をより一層疑うようになった。

矢崎粟は言った。「山本紀夫を疑っています」