894 殴り合い

安藤礼は小林美登里を見つめ、大きな足取りで近づいていった。

「パチッ！」

不意打ちの平手打ちが飛んだ。

小林美登里は頬を押さえ、「よくも小林家で私を打つわね、この下賤な女！」

彼女はここが小林家だからこそ、大胆に手を出せると思っていた。

まさか安藤礼に殴られるとは思わなかった。

安藤礼は言った。「下賤なのはあんたよ、この老いぼれ女！私の娘の婚約なのに、部外者のあんたが何で邪魔するの？」

そのとき、田中千佳が出てきた。

彼女の後ろには警備員が数人いた。

田中千佳は小林美登里に向かって言った。「小林美登里さん、早く帰ってください。ここはあなたの来るところではありません。これ以上居座るなら、小林家として追い出さざるを得ません」

小林美登里は怒鳴った。「誰が私を追い出すっていうの？私だって小林家の人間よ！」

彼女は吉野柔を見て、「あなた知ってる？吉野柔は尻軽女で、たくさんの男と寝て、昔は中絶までしたのよ。策略を使って博を手に入れたの。こんな女に小林家に入る資格なんてないわ」

この言葉に、招待客たちの間で噂話が広がった。

多くの人が疑わしげな目で吉野柔を見つめた。

吉野柔は泣きそうになり、目が真っ赤になった。「そんなことない、小林博さんと付き合う前は、ずっと真面目に生きてきました」

彼女は我慢できずに泣き出した。

安藤礼は怒り心頭で、小林美登里の襟首を掴み、両手で平手打ちを繰り出した。「糞でも食ったの？口が臭すぎるわ！」

小林美登里も黙ってはいなかった。彼女は安藤礼の顔を引っ掻こうとした。

安藤礼は拳を握り、彼女の鼻梁めがけて殴りかかった。

小林美登里は避けながら叫んだ。「あなたが私のスキャンダルを買って拡散させ、セレブの間で私を笑い者にし、ネットで私を中傷する営業アカウントまで買ったでしょう。全部わかってるのよ」

「何を言ってるのか分からないわ！」安藤礼は冷たく言い返した。

彼女は小林美登里の髪を掴み、その口を平手打ちした。「これで二度と余計なことを言えないでしょう！これからは大人しくしなさい」

二人が取っ組み合いをする中、周りのテーブルは全て倒れた。

周囲の招待客も見物に集まってきた。

安藤礼は爪を立てて小林美登里の顔を引っ掻き、大きな傷跡を残した。

小林美登里は怒りのあまり、彼女の腹を拳で殴った。