夜、矢崎粟はホテルの部屋で休んでいた。
スマートフォンを開くと、矢野朱里からのメッセージが飛び込んできた。【粟、早く動画を見て!今日の小林家の婚約パーティーがすごく面白かったわ。今頃、どれだけの人が婚約した両家を陰で笑っているかしら】
矢崎粟は動画を開いた。
開くと、小林美登里と安藤礼が取っ組み合いをしている場面だった。
周りの来賓たちの目には軽蔑の色が浮かんでいた。
矢崎粟は返信した。【確かに面白かったわね】
彼女はもう一度再生した。
二度目を見ているとき、ある細部に気がついた。
全身を包み込むように身を隠した女性が、矢崎美緒によく似ていて、目には嘲笑を浮かべながら目の前の騒動を見ていた。
矢崎粟は指折り数えて考え、やはり矢崎美緒に違いないと確信した。
矢崎美緒は自分の計画が失敗するのを恐れて、わざわざ現場に様子を見に来ていたのだ。
すぐに矢野朱里から返信が来た。【聞いたところによると、両家の婚約は取り消されていないらしいわ。結婚式も来月に決まったって。両家は一体何を考えているのかしら】
矢崎粟は少し笑って返信した。【小林美登里が嫌がっているのが、安藤礼の望むところなのよ】
矢野朱里:【だから、安藤礼は許したの?】
矢崎粟は返信した。【そうでしょうね。さっき動画を見て占ってみたんだけど、吉野柔は妊娠しているわ。それも結婚を進める理由の一つでしょうね】
矢野朱里:【そういうことだったのね...なるほど!】
……
小林家の居間。
小林潤は表情を曇らせて言った。「吉野夫人、今回の件は確かに我が小林家の過ちです。ここで改めてお詫び申し上げます」
澤田霞も言った。「私の躾が至らなかったせいです!」
安藤礼は微笑んで言った。「構いませんわ、大したことではありません。私の娘、吉野柔の結婚式で問題が起きなければそれでいいのです」
彼女は小林博という若者を気に入っていた。
田中千佳は慌てて言った。「はい、はい、必ず立派な持参金を用意して、お嫁さんをお迎えいたします」
今日は本当に驚かされた。どこの奥様が公の場で喧嘩などするものか?
この安藤礼は本当に手ごわい相手だ。
小林昌もうなずいた。「吉野夫人、ご安心ください。これからのことは我が小林家が誠心誠意尽くさせていただきます。二度と過ちは起こしません」