夜、矢崎粟はホテルの部屋で休んでいた。
スマートフォンを開くと、矢野朱里からのメッセージが飛び込んできた。【粟、早く動画を見て!今日の小林家の婚約パーティーがすごく面白かったわ。今頃、どれだけの人が婚約した両家を陰で笑っているかしら】
矢崎粟は動画を開いた。
開くと、小林美登里と安藤礼が取っ組み合いをしている場面だった。
周りの来賓たちの目には軽蔑の色が浮かんでいた。
矢崎粟は返信した。【確かに面白かったわね】
彼女はもう一度再生した。
二度目を見ているとき、ある細部に気がついた。
全身を包み込むように身を隠した女性が、矢崎美緒によく似ていて、目には嘲笑を浮かべながら目の前の騒動を見ていた。
矢崎粟は指折り数えて考え、やはり矢崎美緒に違いないと確信した。
矢崎美緒は自分の計画が失敗するのを恐れて、わざわざ現場に様子を見に来ていたのだ。