885 成就させる

安藤礼から見れば、小林博のような男は、吉野柔に良い生活を与えることはできないと思っていた。

彼は次男坊で、将来家業を継ぐことはできないのだ。

吉野柔は将来吉野グループの社長になるはずで、この二人の差は余りにも大きすぎる。

無理して一緒になっても、将来幸せにはなれないだろう。

吉野柔は跪いて、母の袖を引っ張りながら、哀願するように言った。「お母さん、私たちを認めてください！私は本当に彼のことが好きなんです。」

「あなたが彼を愛しているだけじゃ、何の意味もないでしょう？」安藤礼は呆れた様子で言った。

「お母さん、お願いです。」吉野柔は涙を流しながら、声を震わせて泣いた。

「二階の書斎で跪きなさい。目が覚めたら、降りてきなさい。」安藤礼は冷たく言った。

吉野柔は使用人に支えられて階段を上り、書斎に入った。

居間には二人だけが残された。

吉野健一はため息をつき、「柔の言うことを聞いてやったらどうだ。柔の性格の強さは知っているだろう。最後に娘を追い詰めることになるぞ。」

安藤礼は冷たい表情で、「誰でもいいけど、小林博だけはダメよ。彼の叔母は小林美登里で、一族みんなろくでなしなのよ。」

小林家に嫁いだら、いじめられて死ぬことになるわ。

吉野健一は諭すように言った。「小林美登里はとっくに小林家と絶縁したって聞いたけど。そんなに怖がることないんじゃないか？」

「どうでもいいわ。小林家の者は絶対にダメ。」安藤礼は冷たく言い放った。

一晩が過ぎ、吉野柔は書斎で膝が青くなるまで跪いてから、やっと両親に呼び出された。

安藤礼は尋ねた。「反省した？」

吉野柔は俯いたまま黙っていた。

吉野健一は前に進み出て、娘の手を取り、心配そうに言った。「柔、私たちはあなたのことを心配しているんだ。私たち二人はいつかこの世を去る。私たちがいなくなったら、誰があなたを心から守ってくれるの？」

吉野柔はゆっくりと言った。「私は小林博さんとしか結婚しません。どんなに苦しめられても、この答えは変わりません。」

この人生で、小林博以外とは結婚しない。

安藤礼は怒りで突然ソファから立ち上がり、「いいわ、いいわ、この意地っ張り娘め！今日からあなたは外出禁止よ。大人しく家にいなさい。考えが改まったら、また外出を許可するわ。」

「ふん！」吉野柔は怒って階段を駆け上がった。