二人が別荘に戻ると、矢野朱里も帰ってきていた。
矢野朱里は興奮して尋ねた。「どこに行ってたの?どうして私を連れて行かなかったの?」
彼女が帰ってきたとき、別荘には誰もいなかった。
山本風尾と山本澄夫は遊園地に行っていた。
矢崎粟と藤田川も姿を消していた。
矢崎粟は微笑んで言った。「私たちは調査に行ってたの。あなたを連れて行くのは都合が悪かったわ」
「ふん!」矢野朱里は足を踏み鳴らした。「嫉妬しちゃうわ。あなた今は藤田大師と過ごす時間の方が、私と過ごす時間より長いじゃない」
矢崎粟は笑いながら彼女を引っ張って連れ出した。
藤田川は笑いながら首を振った。
矢崎粟は部屋に戻ると、今日着ていた服を脱いだ。
彼女はズボンの裾の周りに白い粉が付いているのを見つけた。
矢崎粟はそれを嗅いでみると、非常に奇妙な匂いがした。まるで何かの樹脂が燃えたような匂いだった。
これは何だろう?いつ付いたのだろう?
もしかして道院にいたときに気づかずに付いたのだろうか?
彼女はしばらく考えたが思い出せず、この手がかりを心に留めておくことにした。
アパートにて。
小林美登里はソファに座り、退屈そうにバラエティ番組を見ていた。
小林家と吉野家の結婚披露宴で大騒ぎして以来、小林家との関係はさらに悪化していた。
四人の息子たちも彼女に会いに来なかった。
矢崎弘は一度来たが、小林美登里の気に入らないことばかり言うので、彼女に追い出されてしまった。
小林美登里は少し寂しかった。
彼女の毎日の生活は、起きて食事をし、テレビを見て、寝て、また起きて食事をし、テレビ番組を見るという繰り返しだった。
そんな生活を一週間続けていた。
彼女は外出したくなかったし、セレブ仲間の他の人たちとも合わなかった。外の噂話を聞きたくなかった。
料理人とボディガードは24時間待機していて、小林美登里の指示に従っていた。
しかし小林美登里はそれでも退屈だった。
彼女の生活には何かが欠けているようで、話し相手を探しても見つからなかった。
小林家の全員が彼女をブロックしていた。
「あぁ!なんてひどいドラマなの!」
小林美登里はドラマを見ながら突然大声で叫び、リモコンを床に投げつけた。