931 燃える樹脂

二人が別荘に戻ると、矢野朱里も帰ってきていた。

矢野朱里は興奮して尋ねた。「どこに行ってたの?どうして私を連れて行かなかったの?」

彼女が帰ってきたとき、別荘には誰もいなかった。

山本風尾と山本澄夫は遊園地に行っていた。

矢崎粟と藤田川も姿を消していた。

矢崎粟は微笑んで言った。「私たちは調査に行ってたの。あなたを連れて行くのは都合が悪かったわ」

「ふん!」矢野朱里は足を踏み鳴らした。「嫉妬しちゃうわ。あなた今は藤田大師と過ごす時間の方が、私と過ごす時間より長いじゃない」

矢崎粟は笑いながら彼女を引っ張って連れ出した。

藤田川は笑いながら首を振った。

矢崎粟は部屋に戻ると、今日着ていた服を脱いだ。

彼女はズボンの裾の周りに白い粉が付いているのを見つけた。

矢崎粟はそれを嗅いでみると、非常に奇妙な匂いがした。まるで何かの樹脂が燃えたような匂いだった。

これは何だろう?いつ付いたのだろう?

もしかして道院にいたときに気づかずに付いたのだろうか?

彼女はしばらく考えたが思い出せず、この手がかりを心に留めておくことにした。

アパートにて。

小林美登里はソファに座り、退屈そうにバラエティ番組を見ていた。

小林家と吉野家の結婚披露宴で大騒ぎして以来、小林家との関係はさらに悪化していた。

四人の息子たちも彼女に会いに来なかった。

矢崎弘は一度来たが、小林美登里の気に入らないことばかり言うので、彼女に追い出されてしまった。

小林美登里は少し寂しかった。

彼女の毎日の生活は、起きて食事をし、テレビを見て、寝て、また起きて食事をし、テレビ番組を見るという繰り返しだった。

そんな生活を一週間続けていた。

彼女は外出したくなかったし、セレブ仲間の他の人たちとも合わなかった。外の噂話を聞きたくなかった。

料理人とボディガードは24時間待機していて、小林美登里の指示に従っていた。

しかし小林美登里はそれでも退屈だった。

彼女の生活には何かが欠けているようで、話し相手を探しても見つからなかった。

小林家の全員が彼女をブロックしていた。

「あぁ!なんてひどいドラマなの!」

小林美登里はドラマを見ながら突然大声で叫び、リモコンを床に投げつけた。