第54章 腰抜け野郎

景雲昭は葉青を冷ややかに一瞥すると、先ほどまでの口論の声が突然止んだ。

まるで目の前にいる人物の存在を忘れたかのように、別の方向を向いた。しかし、葉青は景雲昭が横を向いた時の目つきが異様に不気味で、まるで自分が汚いものでも見るような目つきだったことに気付いた。

意味不明だった。

きっと景雲昭が怖気づいて相手にしなかったのだろう。

「景雲昭、お前にもお金がないんだから、喬紅葉に謝って借りたらどうだ。結局は妹なんだから...」前の席に座っている蔣夏が振り向いて、小声で助言した。

「借りるって馬鹿言え!お前、余計な口出しして死にたいのか?そんなに喬紅葉が好きなら、お前が付き合えよ。毎日ハエみたいに雲昭の耳元でブンブン言ってんじゃねえよ。次にそんなことしたら、その汚い口を縫い合わせてやるぞ!」蕭海清は「パン」という音と共に本を投げつけ、見事に蔣夏の顔面に命中した。その美しい放物線に景雲昭も思わず拍手喝采したくなった。