第127章 誘拐

電話を切った後、景雲昭は運転手に新たな要求をし、大通りを避けて天香樓近くの路地に入った。人を拉致するのだから、人目につく場所でやるわけにはいかなかった。

運転手は好奇心いっぱいの表情を浮かべていたが、乗客の要求なので当然その通りにした。先ほどこの女性が人を殴る時は凄かったが、年も若そうだし、電話での口調が異常だったとしても、余計なことは考えなかった。景雲昭が車を降りる時、運転手は顔を出して安全に気をつけるよう注意を促した。

夜も更けていたし、こんなに可愛い女の子が路地を歩くのは危険だからだ。

景雲昭が車を降りると、もう一台のタクシーも停車したのが明らかに感じられた。数歩歩いて曲がると、後ろから用心深い足音が聞こえてきて、思わず嘲笑した。

花泥棒が後ろに人がついていると言っていたので、彼女はもちろんこの路地に留まるつもりはなく、あちこち曲がりながら素早く抜け出した。

一方、慎重に後をつけていた喬紅葉は焦り始めていた。景雲昭の歩みが速く、この路地は薄暗くて怖かった。

しばらくすると、景雲昭の姿が見えなくなり、どの分かれ道に行ったのかも分からなくなった。さらに腹が立って引き返そうとした時、振り向いた途端、口を強く押さえられ、引きずられるようにして車に乗せられた。

これは誘拐!?

か弱い喬紅葉はこんな目に遭ったことがなく、あっさりと気を失ってしまった。

目が覚めた時には、すでに郊外にいた。仲間たちはわざわざ人気のない場所を選んでいた。

華寧県は比較的裕福な地域だが、周辺には人の少ない場所も多く、花泥棒の仲間たちは特に人里離れた場所を選んでいた。

夜だったうえ、周りには墓が多かったため、この小道はほとんど人が通らない。喬紅葉が目を覚ますと「ホーホー」という梟の鳴き声が聞こえ、足元の雑草の生えた土を踏むと誰かがついてくるような感覚があり、足がすくんでしまった。しかし今度は気を失う訳にはいかなかった。目が覚めた時、自分も孤魂野鬼になっているかもしれないのだから!

自分がどこにいるのかも分からず、ただ小道に沿って歩くしかなかった。この小道は延々と続き、とても長く感じられた。周りには民家もあったが、時折一軒だけで、遠く離れており、かすかな明かりがかえって不気味だった。