二人は車に乗り、しばらくすると団地の入り口に停車した。団地は規模が大きくないものの、とても静かで環境も良かった。団地に入って数歩歩くと、向かいから一人の女性が歩いてきて、老人を見るなり、すぐに駆け寄ってきた。
「甘先生、やっと来てくださいました。義母がお待ちしているんです…」女性は慎重に言った。
この女性は三十代前半に見え、髪は乱れ、服装も簡素でゆったりとしていた。近づくと油煙の匂いが漂ってきて、普段から台所仕事をよくしているのだろう。
「行きましょう」甘旦那さんは彼女を一瞥し、首を振って、奇妙な表情を浮かべた。
景雲昭はまだ状況が飲み込めていなかったため、当然口を開かなかったが、その女性は彼女に気付き、目に驚きの色が浮かんだ。「お孫さんですか?」
老人はうなずいた。
女性は急いで笑みを浮かべた。「とてもお綺麗ですね。こんなに若くて先生と一緒に往診に来られるなんて、将来きっと名医になられますわ!」
女性の言葉には追従の色がなく、景雲昭も不快に感じることなく、ただうなずいて礼を言い、彼女について家の中へ入った。
入ってみると、七、八十平米ほどの家で、広くはないが、古びてはいなかった。ただし、室内は物が雑然と置かれ、しかもそれらは古く、強い黴臭さを放っていた。家は換気できる構造だったが、扉や窓は閉め切られ、カーテンも下ろされていたため、かなり陰気な雰囲気になっており、この家に入るだけで気が重くなった。
「お母さん!甘先生がいらっしゃいました…」女性は慎重に寝室のドアを開け、小声で呼びかけた。
景雲昭は耳を傾けた。きっとあの部屋の人が、彼らが治療すべき患者なのだろう。ただ、先ほどの老人の言葉は一体どういう意味だったのだろう?
「私を驚かせる気?礼儀も知らないの?私の部屋に入るのにノックもしないで?そんな大きな声出して、私に早く死んでほしいの?」突然、年老いた甲高い声が響き、景雲昭は驚いた。
甘旦那さんは慣れた様子で、ただ眉をしかめただけだった。
この声は電動ドリルのような耳障りな音で、心を刺すようだった。それが老婦人の口から発せられるとなると、年長者の威圧感も相まって息苦しさを感じた。
実際、先ほどの女性の動きは既に十分静かで、声も柔らかだったのに、この老婦人がどうして声が大きいと言えるのか理解できなかった。