第176章 仮象

景雲昭は余計なことに首を突っ込む気はなかったが、甘松柏と項家は以前から知り合いだったため、この時は表情が少し重くなっていた。

「たとえこのお婆さんを助けたとしても、彼女は恩を感じることもなく、むしろあなたをもっと苦しめるかもしれない。こうしましょう、あなたの母親を見に連れて行ってください」と甘松柏は少し考えてから言った。

「もしよろしければ行っていただけると助かります。ただ...秦志學は私が華寧県を離れることを許さず、患者の家族という名目で外部の人の面会を全て拒否しているので、私は母に会うことができないんです」と項瑾も焦りを見せた。

景雲昭は唇を噛み、この項瑾に少し興味を持った。

現在会社は人手不足で、一般社員の採用は簡単だが、有能な人材は少ない。もし項瑾の言うことが本当なら、彼女を採用するのは良い選択かもしれない。

しかし、まだ彼女にその能力があるかどうか確認できていないため、景雲昭は会社のことを先に話すつもりはなかった。

項瑾がそう言うと、甘松柏も手の打ちようがなくなった。まさに途方に暮れていた時、項瑾はため息をつきながら言った。「父は骨董品の研究が好きで、そのため寧市の唐社長とも知り合いになり、とても仲が良かったんです。ただ、私は唐社長に会ったことがなく、連絡先も持っていません...」

もし唐家の方々と連絡が取れれば、たとえ最後に断られたとしても、試してみるつもりだった。

彼女は覚えている。以前、父はよく唐家に素晴らしい品々を見に行き、帰ってきては生き生きと彼女に話して聞かせた。ただ、項家は大企業というわけでもなく、財力も唐家には及ばず、父は唐家で見物するだけだった。

景雲昭は口角を引きつらせた。まさに偶然とは思えない巡り合わせだった。

「あなたの言う唐林おじいさまのことですか?」と景雲昭は一言。

「はい、その通りです」項瑾は驚いた様子で。

景雲昭は深いため息をついた。「彼の電話番号をお教えすることはできますが、彼があなたを助けてくれるかどうかはわかりません。これだけの年月が経っていますから、あなたのことを覚えているかどうかも分かりませんから」

唐おじいさまの個人電話番号はそう簡単に手に入るものではない。そうでなければ、項瑾も今まで全く手立てがなかったはずだ。