第362章 お前と別れる

彼の言葉を聞いて、紀姍姍の心も少し不愉快になった。

彼女は試合に出るわけでもないのに、彼らのように必死になる必要があるのだろうか？それに、さっき父が怒っていたのに、崔均は自制するどころか、父の前で彼女を叱りつけて、家族の気持ちを考えていないのか？

紀姍姍は怒っていたが、崔均に向かって怒りを爆発させることはなかった。というより、そもそも崔均に対して怒りを表したことがなかったので、聞こえないふりをした。

しかし、この時の崔均はいつもと違っていた。立て続けの打撃で怒りの限界に達しており、紀姍姍は孫顏のように彼の忍耐を引き出せる存在ではなかった。むしろ彼の潜在意識の中で、紀姍姍は彼の周りをついて回るお荷物のような存在で、振り返って引っ張る必要はないが、遅れることも許さなかった。

しかし今、このお荷物が彼の存在を無視するなんて、どうして我慢できようか？

すると、崔均は冷たい表情で言い放った。「無視するんだな？これからは俺に近づくなよ！」

紀の家族はそれを聞いて、顔色を変えた。

景雲昭はそれを見て、嘲笑的な表情で紀姍姍を見つめた。

実は紀姍姍もプライドが高かったのだが、好きな人の前ではそれを無視していただけだった。今、景雲昭のその表情を見て心地が悪くなり、さらに両親が怒りで顔を青ざめさせているのを見て……

彼女が何と言おうか迷っているその時、一つの影が崔均に向かって突っ込んでいった。

紀姍姍は慌てて、気がついた時には自分の兄が崔均に覆いかぶさり、その顔面を激しく殴りつけているのを目にした。

完全に呆然としてしまった。

その場は一瞬にして騒然となった。

崔家の人々、紀家の人々、そして野次馬たちが、混乱の渦に巻き込まれた。

「紀正興！私たちが紀家を恐れているとでも思っているのか。今、お前の息子が私の息子を殴った。もうお前の娘と崔均との仲は永遠にありえない！」崔占先は激怒した。

崔均は顔を押さえながら叫んだ。「紀姍姍、お前の家族は全員クソだ。人を殴るなんて、お前とは終わりだ！」

紀姍姍は呆然とした。まだ崔均と付き合ってもいないのに、どうして振られたことになるのだろう？

景雲昭は場違いな笑みを浮かべた。

窮鼠猫を噛むとはこの一家のことを言うのだろうか？