第370章 ケチ

紀姍姍のその勢いは熱すぎて、景雲昭は彼女に驚かされ、すぐに避けた。

「どうしてここに来たの？」景雲昭は頭が痛くなった。

「あなたに会いに来たのよ。失恋したの。私の家と崔家は近いから、帰ったら絶対に崔均に頭を下げたくなっちゃうわ。そうなったら、お父さんとお兄さんに申し訳ないでしょう。だから考えに考えて、外に出て気分転換した方がいいと思って。学校には休みを取ったから、まだ時間もあるの。」

紀姍姍は我が道を行き、口では失恋したと言っているが、目が少し腫れている以外は、普段と変わらないように見えた。

わがまま、無茶苦茶、思いついたことをすぐ実行する。

「でも、今から出かけるところなんだけど。」景雲昭は言った。

紀姍姍は一瞬驚き、彼女の手にある荷物も見た。「どこに行くの？」

「寧市に友達に会いに行くんだけど……」

「じゃあ、一緒に行きましょう？私を一人で華寧県に置いていくわけにはいかないでしょう？そんなことしたら、ますます嫌われちゃうわよ。とにかく私は気にしないわ。今は心が傷ついているの。負傷者が一番大事でしょう。私について行かせてくれないなら、今すぐ喧嘩するわよ！」紀姍姍は脅すような顔をした。

景雲昭は口角を引きつらせた。なんてしつこい人なんだろう？

「返事しないの？じゃあ、叫ぶわよ……」紀姍姍はふんと鼻を鳴らし、大声で「景雲昭……」と言い始めた。

「分かった、ついて来て。」景雲昭は呆れた。

紀姍姍のような人は絶対に良い言葉を言うはずがない。もし本当に人前で彼女に罵倒されたら、彼女にとっては大したことではないかもしれないが、十分迷惑だ。しかも最近やっと生活が落ち着いてきたところなのに、これで他人の注目を集めたくはなかった。

紀姍姍は勝利の笑みを浮かべ、にやりと笑った。

「前に私のことを脳なしって言ったからよ！これからまた私を罵ったら、毎日あなたのマンションの門の前に立って、大声で叫ぶわよ！」紀姍姍はふんと鼻を鳴らし、得意げだった。

まさに図々しい限りだ。

景雲昭はこれほど厚かましい女の子を見たことがなかった。目が悪い、身内びいき、短気、図々しい、まったくいいところがない。

彼女と知り合いになったことは、まさに拷問だ。

「約束よ。寧市に着いたら別々の道を行くの。本当に用事があるから。」景雲昭は荷物を持ちながら、もう一度念を押した。