第596章 宝物

以前なら、江蓉がこんなに憔悴した様子を見たら、蕭道安は必ず彼女の言うがままにして、蕭海清がどう言おうと聞く耳を持たなかっただろう。しかし、今回は違った。

蕭海清は特に綺麗に着飾り、蕭道安が新しく買ってくれた服を着て、まるで盛大な舞踏会にでも行くかのようだった。体つきはまだそれほどセクシーではなかったが、それでも悪くはなく、魅力的な雰囲気を醸し出していた。

彼女は江蓉の寝室の入り口に立ち、夫婦を見つめながら言った。「江叔母さんが行かないなら、私も行きません。お父さん、怖いです。」

「じゃあ、お父さんが付き添おうか？」蕭道安はいらだちを感じながら、突然娘があまりにも弱々しくなったように思えた。以前はこんなではなかったのに。

「でもお父さんがどんなに良くても、お母さんの役割は代われないでしょう。江叔母さんは違うわ。私が将来結婚したときに、叔母さんは私にアドバイスをくれるし、この道中で人との付き合い方も教えてもらいたいの。お父さんも知ってるでしょう、私は短気だから、うっかりジェームズさんを怒らせてしまうかもしれないし。」蕭海清は忍耐強く説明した。

まるで鉄の意志を持っているかのようだった。

蕭道安はますます困惑した。しかし、確かに江蓉が娘に助言してくれれば、より安心できるだろう。

江蓉を見下ろしながら言った。「何か悪いものでも食べたのか？少し我慢できないか？」

江蓉は言いたくても言えなかった。

「こうしましょう。運転手を呼んで、私を送った後で江叔母さんを病院に連れて行ってもらいましょう。すぐに江叔母さんは元気になれるはずです。」蕭海清が提案した。

江蓉が何か言う前に、蕭道安は頷いて「そうしよう！」と言った。

江蓉は瞬時に顔を真っ赤にした。

断りたかったが、もし強く拒否すれば、後で蕭道安に責められるのは確実だった。さらに、蕭海清が行かないか、あるいはジェームズの所で何か問題を起こせば、それも全て自分のせいにされるだろう！

心の中では吐き気がするほど腹が立っていた。蕭海清を見つめながら、彼女を飲み込んでしまいたいほどの憎しみを感じていた。

しかし表面上は、江蓉は良き継母を演じなければならず、優しく愛情深い表情で車に乗り込んだ。

蕭海清は微笑んで、すぐ後に続いた。