第038章:「大丈夫、入れて……」

坂本加奈は中庭の金木犀の花が綺麗に咲いているのを見て、思わず数輪を摘み取りました。部屋に持ち帰って飾れば、その香りが長く楽しめるし、ドライフラワーにもできるし、もっと集めて金木犀酒も作れるかもしれないと考えていました!

月が空高く昇り、その白い光が地上に降り注いでいました。よく見ると、月の上で誰かが桂の木を切っているように見え、その傍らには小さな兎が座っているようでした。

坂本加奈が摘んだ小さな金木犀の枝が地面に落ちました。彼女が拾おうと身をかがめた時、夜風が吹き抜け、木々の葉を揺らし、満開の黄色い花びらが風に舞い散りました……

彼女が顔を上げると、まだ金木犀が舞っているのが見え、黄色い雪のように空中を舞う様子に思わず笑みがこぼれました。

黒川浩二は、いつの間にか車から降りて、玄関に立っていました。漆黒の瞳で、この光景から一瞬も目を離さずに見つめていました。