「行っちゃダメ!」
「絶対に行かせない!」
佐藤薫と坂本真理子が思わず同時に叫んだ。
坂本加奈は目を丸くして不思議そうに見つめた。なぜ二人の息がこんなにも急に合うようになったのだろう?
坂本真理子は眉をひそめ、珍しく真剣な表情を浮かべた。「女の子一人であんな怖いところに行くなんてダメだよ。もし何か危険なことがあったらどうするの?」
普段はどれだけ軽率でも、重要な時には冷静に判断できる彼は、坂本加奈が恐怖を感じることを望まなかった。
「でも——」
坂本加奈の言葉は佐藤薫に遮られた。「もう、あなたは黒川社長とメインクエストに集中して。サブクエストは私たちに任せなさい」
そう言いながら、彼女を黒川浩二の方へ軽く押した。
坂本加奈はよろめいて男性に体をぶつけた。黒川浩二は長い腕を伸ばし、彼女をしっかりと抱き留めた。
「男なら、サブクエストをやりなさいよ。後ろにはサブクエスト2もあるから、私が行くわ」佐藤薫はイライラした表情で言った。この鈍感な男、空気読めないの?邪魔しないでよ。
「誰が男じゃないって言うんだ!」坂本真理子は不機嫌そうに反論した。「お前こそ女らしくないじゃないか!」
「私が女らしくないですって?少なくとも、入った途端にキャーキャー叫んでた人とは違うわよ!」佐藤薫は冷ややかに鼻を鳴らし、目に狡猾な光を宿して言った。「まあいいわ、臆病者が行きたくないなら、私が行くわ!」
「誰が臆病者だって!」坂本真理子は彼女の挑発に乗ってしまい、頭に血が上って思わず叫んだ。「行けば行くさ!俺は天も地も恐れない、幽霊なんか怖くないぞ!冗談じゃない!!」
佐藤薫は計画通りに事が運んだことを喜び、すぐに笑顔を見せた。「そう?じゃあ行ってらっしゃい!がんばってね!」
手に持っていた懐中電灯を彼に渡した。
坂本真理子:「……」
一瞬の興奮が冷めた次の瞬間、我に返ったが、もう……
一度口に出した言葉は、こぼれた水のように、後悔しても取り返しがつかなかった。
坂本加奈は彼が本当に行きたくなさそうなのを見て、再び助け舟を出した。「お兄ちゃん、黒川浩二さんと一緒に行って、私一人でサブクエストを行けるわ」
佐藤薫はそれを聞いて慌てて、必死に目配せをした。