黒川浩二の動きが一瞬止まったが、すぐに普段通りに戻り、何気なく話しかけた。「そんなに薬を飲まなければならないほど、深刻な病気なの?」
坂本加奈は体を強張らせながら疲れを感じ、ソファの背もたれに寄りかかってぐったりと答えた。「うん、とても深刻な病気だったの」
心に深刻な病を患い、命を落としかけた。
林翔平がいなければ……
カールした睫毛が震え、首を横に振った。もういい、彼のことは考えないようにしよう。
黒川浩二は解熱剤を取り出し、元気のない彼女の小さな顔を見つめながら、喉仏を動かし、低い声で言った。「今は治ったの?私は良い医者をたくさん知っているけど」
坂本加奈は乾いた唇を少し曲げて、「治ったわ」と答えた。
彼女を治してくれた理由がもう存在しないとしても。
夕食は胃に優しい粥で、さっぱりとした前菜が添えられていた。
坂本加奈は風邪で食欲がなく、無理して小さな茶碗一杯の粥を飲んだ後、二階に上がってシャワーを浴びた。浴室から出てきた途端、男性の深くて鋭い眼差しと出くわした。
「あなた、どうしてノックもせずに私の部屋に入ってくるの?」
「ノックはしたよ。君が聞こえなかっただけだ」スーツの長い脚を包んだ男性が近づいてきて、不機嫌そうな口調で言った。「病気なのに髪も乾かさないなんて、また大病を患いたいのか?」
彼女の頬は湯気で少し赤みを帯びていたが、唇の色は悪く、湿った髪が前に垂れ、髪先からは水が滴り落ちていた。
「お風呂上がりでまだ間に合わなかったの」坂本加奈は説明したが、彼が何に怒っているのか分からなかった。
「薬を飲みなさい。ドライヤーはどこにある?」黒川浩二は手に持っていた薬とコップを彼女に渡した。
「洗面所の棚の中」
坂本加奈が答え終わるか終わらないかのうちに、彼が洗面所に向かおうとしたので、急いで前に立ちはだかった。
黒川浩二:?
「私、薬を飲んだら自分で髪を乾かすから」坂本加奈は洗面所のドアの前に立ちはだかって、彼を入れまいとした。
お願い、お風呂上がりで服や下着が全部中にあるのに、見られたら生きていけない!
「早く薬を飲みなさい」黒川浩二は彼女の腕を掴んで引き離そうとした。