第80章:黒川浩二は林波留のことを好きになるのか?

林家。

林おばあさまは背もたれのクッションに寄りかかり、くつろいだ様子でお茶を手に持ち、一口すすった後、階段を降りてくる若者に目を向けた。

「もう諦めなさい」

林翔平は暗い表情を浮かべ、ポケットに入れた両手を握りしめ、一言一言噛みしめるように言った。「あの時の結婚は、あなたたちが無理やり押し付けたものです。なのに今になって諦めろと?」

林おばあさまは軽くため息をつき、「分かっているわ。あなたの心の中には、私が白川晴香との仲を引き裂いたことへの恨みがあるでしょう。でも、坂本加奈がいなくても、あなたの両親は白川晴香を受け入れなかったはずよ」

林翔平は彼女の前に進み出て、まだ諦めきれない様子で言った。「おばあさま、坂本家のおばあさまとは何十年もの付き合いでしょう。もう一度何か方法を考えてください」

林おばあさまは茶碗を置き、首を振った。その態度は明らかだった。

「おばあさま……」

林翔平がまだ何か言おうとすると、林おばあさまは手を上げて制止した。「当初、あなたと坂本加奈との結婚を決めたのは両家の約束があったからよ。今、婚約が解消されたのは、むしろ良かったのかもしれないわ」

林翔平は眉をひそめ、その意味が理解できないようだった。

林おばあさまは冷笑し、「あの時、坂本家の方々が坂本加奈を送り出した理由が、本当に田舎で療養させるためだと思っているの?」

「それは……」

「あの子は生まれた時から泣きもせず笑いもせず、生まれてすぐに話せた、まさに化け物よ!!」後に、あの子が可愛らしく素直に育ち、ちょうど林翔平が白川晴香と関係を持ち始めた時、婚約を口実に二人を引き離したのだった。

もしそうでなければ、後で別の理由をつけて婚約を解消していただろう。

林翔平の目には驚きが満ちていた。「生まれてすぐに話せた?そんなことがあり得るんですか?」

「なぜあり得ないの?」林おばあさまは冷笑した。「坂本家は完璧に隠せると思っていたでしょうが、あの日私が偶然立ち聞きしていなければ、上野美里がこんな化け物を産んだことも知らなかったわ!」

化け物、化け物と連呼し、先ほどまでの坂本加奈への慈愛と寵愛は完全に消え去っていた。

林翔平はその場に立ち尽くし、林おばあさまの言葉を受け入れることができず、自分に諦めさせるための作り話だと思いたかった。