黒川浩二はすぐにビデオ通話をかけてきた。一度かけるたびに、坂本加奈は一度拒否する。そのやり取りが繰り返された。
黒川浩二の前で着替えショーを披露したことを思い出すと、恥ずかしさで死にたくなった。
黒川浩二は10回以上もビデオ通話をかけてきたが、坂本加奈は一度も出なかった。彼はメッセージを送るしかなかった。
黒川浩二:さっき食事に行ってたんだけど、ビデオ通話が切れちゃったの?
坂本加奈はその文字を一瞥し、目を大きく見開いた。彼が食事に行っていたということは、何も見ていなかったということ?
加奈:さっき食事に行ってて、携帯見てなかったの?
黒川浩二:うん、どうかした?
坂本加奈は一瞬前まで地獄にいたのが、今は天国にいるような気分だった。重荷から解放されたかのように安堵のため息をついた。
加奈:なんでもない。お風呂上がったし、もう休むわ。あなたも早く休んでね。
黒川浩二:おやすみ。
加奈:おやすみ、おやすみ。
坂本加奈は携帯を置き、寝袋に戻って思わず二回転がった。
一方、黒川浩二も携帯を置いた。頭の中に艶やかな光景が浮かび、瞳が次第に欲望に染まっていく。長い指が無意識にネクタイを緩め、だらしなく垂れ下がっていた。
食事中、携帯は目の前に置いてあり、時々チラッと見ていた。だが、一目見た瞬間に、その細い腰、白い肌、柔らかな曲線が目に入ってしまった……
少女は気づかずに慌てて寝間着に着替え、魅惑的な体つきを隠してしまった。その瞬間、彼の心は空っぽになったような気がしたが、ある部分は逆に張り詰めていた。
長年、女性を遠ざけてきた彼は、心理カウンセラーの長期的な治療がなければ、女性秘書さえ我慢できなかったはずだ。まして女性の体に対する妄想など、とんでもなかった。
今夜、彼は確かに誘惑されてしまい、かつてない衝動と欲望を感じていた。
しかし少女は相当驚いてしまい、ビデオ通話を切っただけでなく、電話にも出なくなった。彼女が怖がって戻ってこなくなるのを避けるため、何も見ていなかったふりをして、一度だけ嘘をつくしかなかった。
黒川浩二は俯いて、薄い唇に笑みを浮かべた。爽やかで満足げな笑顔で、漆黒の瞳には期待の色が漂っていた。