黒川浩二は自ら彼女を学校まで送り、道中、少女は終始うつむいて、不機嫌な様子だった。
彼は何も言わず、慰めもせず、ただ彼女の小指を握って遊んでいた。
坂本加奈は眉をひそめ、自分の手を引っ込め、指すら触らせなくなった。
「怒ってるの?」黒川浩二は薄い唇を動かし、わざと聞いた。
坂本加奈は振り向いて彼を睨みつけ、「付き合い始めたばかりなのにスカートを履かせてくれないなんて、これからもあれこれ口出しするつもり?私は恋愛してるのよ、まるで…」
最後の一言は歯の間に消えてしまった。
黒川浩二は彼女が最後に何を言おうとしたのか分かっていたが、怒る様子もなく、彼女の小さな手を握り、説明した。「寒いし、教室には暖房もない。あなたは風邪が治ったばかりだよ。また注射を打ちたいの?」
坂本加奈は即座に首を振ったが、まだ口を尖らせていた。
どの女の子だって恋人の前でかわいく着飾りたいものでしょう?
黒川浩二は彼女がまだ機嫌を直していないのを見て、優しく諭すように、「いい子だから。春になって暖かくなったら、股割れズボンを履いて走り回っても止めないから。」
「何言ってるのよ!」坂本加奈は可愛らしく彼を睨んだが、口角は思わず上がってしまった。
彼に笑わされて、もう怒れなくなってしまった。
黒川浩二は手を伸ばして彼女の尖った鼻を軽くつついた。「君は笑顔が可愛いね。もっと笑って。」
「何でもないのに笑うなんて、私はバカじゃないわ…」坂本加奈はそう言いながらも、頬のえくぼが見えた。
車は学校の門前で止まり、黒川浩二は彼女を中まで送らず、車の中から彼女の細い背中が校内に消えていくのを見送った。
「黒川社長、このまま会社へ向かいましょうか?」運転しながら、黒川社長の恋愛を目撃して心臓が震えていた藤沢蒼汰は、やっと我に返った。
最初はロリコンじゃないって言ってたのに?
ふん、男って…
黒川浩二は淡々と「ああ」と答え、車が発進しようとした時、突然また口を開いた。「墨都大学の学長と連絡を取って、エアコン寄贈の件について話し合ってくれ。」
墨都大学は質素倹約を校風としており、教室にはまだエアコンが設置されていなかった。
藤沢蒼汰は一瞬驚いたが、すぐに理解し、急いで応じた。「はい、社長。」
……