この夜、坂本加奈は夢も見ずぐっすりと眠れたが、黒川浩二は苦しい一夜を過ごした。一晩中眠れず、彼女に翻弄されていた。
明暗が分かれた。
……
翌日、坂本加奈は自分の大きなベッドで目を覚ました。温かく柔らかな布団に包まれていた。
あくびをしながら起き上がり、髪をかきむしった。頭の中にいくつかの断片的な記憶が浮かび、鹿のような大きな瞳が突然見開かれた。
しまった、昨夜また飲み過ぎてしまった。
崩壊した両手で顔を覆い、後悔で腸が青くなりそうだった。
今回は記憶が途切れることはなく、昨夜のことはすべて覚えていた。黒川浩二が抱きしめてくれたこと、寝かしつけてくれたことも……
「うぅ、恥ずかしい……」
ベッドの上で転がりながら……
夜が明けて、坂本加奈は身支度を整えて階下に降りると、ちょうどキッチンから出てきた上野美里と出くわした。
上野美里は心配そうに彼女の額に手を当てた。「どこか具合が悪くない?本田おばさんに二日酔いのお茶を入れてもらったわ。飲めば楽になるわよ」
「大丈夫です、お母さん」坂本加奈はリビングを見回しながら尋ねた。「お母さん、黒川浩二はどこ?」
「本田おばさんが言うには、朝早くに出て行ったそうよ。様子を見るに急ぎの用事があったみたいね」と上野美里は答えた。
「そう」坂本加奈はこっそりほっとしたが、次の瞬間に寂しさが押し寄せてきた。
どんな用事があったのか、私が目を覚ますのを待って新年の挨拶もできないほど急いでいたの?
上野美里は彼女の手を引いてリビングへ向かいながら諭すように言った。「あなたね、これからはお酒を控えめにしなさい。坂本真理子のまねをしちゃダメよ。あの子は男の子だから飲んでも大丈夫だけど、あなたは女の子なんだから飲み過ぎると危険だってわかってるでしょ?」
坂本加奈は急いでうなずき、素直に答えた。「お母さん、もう二度とお酒は飲みません。一滴も」
一度飲むたびに恥をかく、もう三度目は御免だった。
「いい子ね」上野美里は子供の過ちにいつまでもこだわる頑固な親ではなかった。
「お母さん、ちょっとトイレに行ってきます」坂本加奈は言い訳をして逃げ出した。
「行っておいで、私はおばあさまの様子を見てくるわ」上野美里は立ち上がって階段を上がった。