坂本真理子はドアを開ける動作を止め、振り返って坂本加奈を笑いながら睨みつけた。
坂本加奈は笑って舌を出した。
上野美里は心配そうに尋ねた。「こんな遅くにどこへ行くの?」
「友達と遊びに行くんだ」と坂本真理子は答えた。「後で帰ってくるよ」
「ママ、私もお兄ちゃんと一緒に行きたい」と坂本加奈は甘い声で言った。
「どこで遊ぶかも分からないし、外は寒いわ」と上野美里は息子に娘を連れて行かせるのが心配だった。
坂本加奈は唇を尖らせた。「でも、お兄ちゃんと行きたいの」
上野美里が何か言おうとした時、坂本健司が先に口を開いた。「行きたいなら行けばいい。早く帰ってくればいいだけだ」
そう言って、坂本真理子の方を見た。「妹の面倒をちゃんと見ろよ。さもないと帰ってきたら皮を剥ぐぞ」
「パパ、ママ、ありがとう」坂本加奈は言うと素早く立ち上がって二階に服を着替えに行った。階段の所で坂本真理子に忘れずに言った。「10分待っててね、絶対待っててね」