坂本加奈はそれを気にせず、純粋に鑑賞の気持ちで彼女のダンスを見ていた。
彼女は上手に踊っていて、会場の男性たちはもちろん、自分が男性だったとしても興奮したことだろう。
一曲が終わると、白川晴香は汗だくで、髪が頬に張り付き、より一層の大人の色気を醸し出していた。林波留が差し出したティッシュを受け取り、汗を拭いながら坂本加奈を見た。
「あなたの番よ」林波留は勝ち誇ったような表情を浮かべた。
墨都の春は他の都市より早く訪れるが、坂本加奈は彼女たちのように早々とスカートに着替えて、すらりとした脚を見せることはなかった。
やはり家には「父親系」の彼氏がいて管理しているからね。
今日彼女はズボンを履き、春向きの薄手のセーターを合わせ、長い髪をお団子にまとめていた。いくつかの黒髪が不規則に落ちて、ふわふわとして更に可愛らしく見えた。
林波留は彼女のこの普通の服装を見ただけで笑いを抑えられなかった。こんな格好で春子姉さんに勝とうなんて、まったくの妄想だわ。
坂本加奈はステージに上がり、音響担当者の側に行って、彼の耳元で二言三言囁いた。
音響担当者は明らかに驚いた表情を見せ、確認のため彼女に再度尋ねた。
坂本加奈は笑顔で頷き、軽く頭を下げてお礼を示した。
音響担当者は複雑な表情を浮かべ、彼女がもう諦めて、開き直ったのだと感じた。
坂本加奈はステージの中央に立ち、スポットライトが当たった瞬間、軽快な音楽が流れ始めた。ピンクの唇を軽く結び、甘い歌声がマイクを通して皆の耳に届いた。
会場は静まり返り、佐藤薫は目を見開いて、眼球が飛び出しそうになった。
林波留と白川晴香は目を合わせ、その後二人とも軽蔑的な笑みを浮かべた。
坂本加奈はそれに気付かないかのように、自分のパフォーマンスに没頭し、甘い歌声に合わせて可愛らしいダンスを踊り始めた。
ダンスの動きは単純だったが、どこか愛らしさと可愛らしさが溢れていた。もともと可愛らしい萌え系の顔立ちだった彼女の、甘えた表情や駄々っ子のような仕草の一つ一つが、会場の男性たちの心を射抜き、女性たちさえも彼女の可愛さに魅了された。
最初は呆れていた客たちも、次第に音楽と彼女の可愛らしさに感染され、一緒に踊り出し、さらには合唱まで始めた。