林翔平は林波留に呼ばれてきたのだが、白川晴香が戻ってきたとは思わなかったし、まして二人がダンス対決をするとは予想もしていなかった。
白川晴香のダンスは確かに魅惑的で色気があったが、坂本加奈がステージで跳ね回る姿はより可愛らしく、声は甘く、瞳は澄んで輝いていて、まるで小さな太陽のようだった。
彼は今まで気づかなかったが、実は坂本加奈もとても綺麗で、他人にない輝きを持っていた。
坂本加奈は彼を見た瞬間一瞬固まり、我に返って静かに視線を逸らした。今夜は白川晴香に勝てないことを悟った。
でも票数は同じだから、負けたわけではない。ただ林波留が犬の真似をするのが見られないのが残念だった。
林波留は急いで林翔平の前に歩み寄り、バラの花を彼の手に押し付けた。「お兄ちゃん、早く春子姉さんに投票して!」
林翔平はバラを受け取ったが何も言わず、ステージを見上げた。
坂本加奈は俯いて彼を見なかったが、白川晴香は優しい眼差しで期待に満ちた視線を送ってきた。
林翔平はバラを持ってステージに向かった。
白川晴香は彼が自分に向かって歩いてくるのを見て、赤い唇に笑みを浮かべ、優しく呼びかけた。「翔平……」
林翔平は一瞬彼女を見上げ、白川晴香が手を伸ばしてバラを受け取ろうとした時……
彼は目を伏せたまま白川晴香の前を通り過ぎ、衆人環視の中、坂本加奈の前まで歩いていった。
白川晴香の口元の笑みが凍りつき、信じられない様子で男の凛々しい後ろ姿を見つめた。
林波留はさらに驚いて声を上げた。「お兄ちゃん……」
林翔平は聞こえないふりをして、熱い眼差しで坂本加奈を見つめた。「君が歌って踊れるなんて知らなかった。」
坂本加奈:?
知らないことなんてまだまだたくさんあるわよ。
林翔平は手のバラを彼女に差し出した。「次も君の踊りが見られたらいいな。」
「………」坂本加奈の可愛らしい顔は呆然としていたが、我に返って瞬きをし、彼が気が変わる前のように素早くバラを受け取った。
「もう私に投票したんだから、後悔しても無駄よ。」
林翔平は口元に笑みを浮かべた。「この一票は君に入れる。後悔なんてしない。」
「お兄ちゃん、一体何をしているの?」林波留は怒って足を踏み鳴らした。
林翔平は彼女を横目で見たが何も言わず、白川晴香に目が行った時、一瞬止まった。